「あ」
「まふゆ達も温泉かい?」
「うん、九条くん達も?」
彼らの背後には、西洋風のホテルと打って変わって純和風の檜造りの建物があり、二つある入り口にはそれぞれ〝男湯〟〝女湯〟と札が掲げられていた。
なるほど、この札が時間ごとに掛け変わるということか。
一人納得していると、お風呂セットを腕に抱えた夜鳥くんがご機嫌に笑う。
「やっぱハコハナに来たからには、温泉だからな! 真っ先に行かない手はないだろ!」
「まぁその意見はわたしも同意ですけど。……夜鳥さん、間違っても女湯を覗いたりはしないでくださいよ」
対して朱音ちゃんは目をジトッとさせて言い、それに間髪入れずに夜鳥くんが叫んだ。
「ばっ……、バカヤロー!! 不知火には、オレがそんなことするようなヤツに見えんのか!?」
「はい、見えます」
「な……っ!」
キッパリと言い切る朱音ちゃんに絶句する夜鳥くん。それに私も追い打ちをかける。
「夜鳥くんは前科があるんだもんね。私に貝殻ビキニ勧めたりとかさ」
「あー、雪守ちゃんの際どい写真集を読んでたりもしてたもんね」
「ああ。そういえばありましたね、そんなことも」
「えっ、何それ写真集!? しかも際どいって!?」
そんな話、初耳なんだけど!! と睨みつければ、夜鳥くんが慌てたように雨美くんと木綿先生を見た。
「おいっ!! なに雪守にバラしてんだよ!? てゆーかあの写真集はお前らだって読んでたじゃねーか!!」
「げーヤバ。鵺、アンタってそんな変態だったんだ」
「う゛っ!!」
真っ赤な顔で吠える夜鳥くんも、心底引いた様子のカイリちゃんを前にさすがに堪えたのか、ガックリと項垂れる。
するとそれに九条くんが苦笑した。
「まぁそこまでにしとけ、朱音。俺達もちゃんと夜鳥を見張っておくから」
「むー、分かりました。神琴様がそう言うなら……」
未だ警戒心を露わにして朱音ちゃんは夜鳥くんを見つめているが、やがて納得したのかコクリと頷く。
そんな様子に私も苦笑して、朱音ちゃんを促し、女湯へと足を踏み入れたのだった――。
