部長さんがまさかの高級ホテルの御曹司とだったという事実が発覚し、着いて行かない頭のまま案内された客室。
 そこでまた私はポカンと口を開けることとなった。


「す、ご……」


 全面ガラス張りの壁に大理石の床。
 そしてハコハナを一望出来る、見渡す限りの大パノラマ。
 更にとんでもなく広々とした空間には、見るからに高級そうな家具の数々が置かれている。

 このちょこんと飾ってある花瓶なんて、一体いくらするんだろう? 考えるだけで怖いから、こういうのを無闇に置かないでほしい。
 そしてそう思っているのは私だけはないようで、後ろにいる朱音ちゃんとカイリちゃんも全く同じ顔をして花瓶を眺めていた。


「最上階のスイートルーム、ワンフロア全部貸し切りって、マジ?」

「部長さん、一人一部屋使っていいって言ってたねぇ」

「正直この部屋だけで7人全員余裕で寝れちゃいそうなんだけどね……」


 さすがは日ノ本帝国を代表する巨大ホテルグループの御曹司ということなのだろうか。
 あまりにスケールの大きな〝お礼〟に、ただただ圧倒されるしかない。


「料理はめちゃくちゃ期待してていいって言うし、温泉も色んな種類があるって、さっき部長言ってたよな?」

「うん、わたしパンフレット貰ったよ! 香り湯にうたせ湯にジャグジーに……、他にも色々! しかも24時間入り放題な上に、男女が時間ごとに入れ替わるから、いつ入っても違う雰囲気が楽しめるんだって!」

「へぇー! お部屋がこんなに素敵だと、温泉の方も否応なく期待しちゃうよね」


 朱音ちゃんが取り出したパンフレットを三人で覗き込んで、きゃっきゃと盛り上がる。
 するとその時、部屋の外から何やら騒がしい声が聞こえてきた。