◇


「今日の舞台はハプニングもあったけど、結果的にはお客さんも大盛り上がりで大成功だったわ!! 本っっ当に、みんなご苦労さまぁぁ!! さぁっ! 今日は食べて飲んで、目一杯楽しみましょぉぉぉ!! カンパーーイ!!!」


 青と白を基調とした港町風の内装がお洒落な、魚料理がメインのお店。
 そのお店を貸し切りにして、部長さんの乾杯の挨拶(あいさつ)を皮切りに、演劇部の打ち上げは盛大に開催された。


「あ、このムニエル美味しーい! ティダのお魚だぁ! バーベキューした時も食べたやつだよね!」

「わぁ、ほんとだ! 帝都でこれが食べられるなんて、嬉しい!」


 朱音ちゃんが幸せそうに頬張っているムニエルとやらを私もぱくつく。
 すると懐かしいティダの魚の味が口いっぱいに広がって、私の顔も自然と笑顔になった。

 ムニエルっていうのは、お魚のバター焼きってことなのかな? まろやかなバターの風味が淡泊な白身魚にマッチして素材の甘味を見事に引き出している。


「お、こっちはパエリア! あっちにはアクアパッツァまであるじゃん! 帝都で食えるなんて、ここの店主やるな……!」

「ずっと帝都に住んでるけど、こんな良いお店があったなんてボク知らなかったよ」

「パエ……、あくあ……?」


 ポンポン飛び出す未知の言葉。夜鳥くんと雨美くんのやり取りに着いて行けず、目を白黒させていると、クスリと笑う声が後ろからした。


「パエリアとアクアパッツァ。パエリアは魚介と米を炒めた料理で、アクアパッツァは魚とトマトの煮込み料理だね。はい」

「へぇー。あ、ありがとう」


 私の隣に来た九条くんが、説明ながら手際よくお皿にパエリアとアクアパッツァとやらを取り分けてくれる。
 それらを受け取って口に含むと、どちらも初めて食べる味だがやはりとても美味しくて、私は顔を綻ばせた。


「んんっ! 美味しい……!」

「ふふん。だろう」


 そうして素晴らしい料理にみんなで舌鼓を打っていると、向こうでジュースを飲んでいたカイリちゃんがこちらにやって来て、心なしか得意げに笑った。