「会長さんっ、副会長さんっ!! お疲れさまぁぁぁん!!!」

「まふゆちゃん、神琴様っ!! 超よかったよぉぉーー!!」

「!?」


 真っ暗だった舞台が突然パッと明るくなり、舞台袖から部長さんや朱音ちゃん、カイリちゃん。それに部員さん達。
 更には夜鳥くんや雨美くん、木綿先生までもがこちらに走って来た。


「色々波乱はあったし、ラストは意味深だったけど、ともあれ舞台は大成功!! さぁカーテンコールよっ!!」

「えっ!?」


 ――パチパチパチパチ


 九条くんと騒いでて気づかなかったが、確かに幕の向こう側ではたくさんの拍手が聞こえる。


「ほら、アンタらは真ん中だ。寄った、寄った!」

「わわっ!?」


 カイリちゃんにぎゅむっと押され、私と九条くんが真ん中に押し出される。
 そしてみんなで横並びになって手を繋いでいると、また幕が上がった。

 すると目の前で一斉に巻き起こる、盛大な歓声。


「……っ!」


 それを目にした瞬間、この場に至るまでの様々なことが全て報われた気がして、自然と瞳が潤んだ。


 ◇


 ――とんでもない無茶振りから引き受けることになってしまった、舞台の主演。
 最初は絶対無理って思っていたけど、無事にやり遂げた。

 だったら〝無理〟なんて無いのかも知れない。
 九条くんのその整った横顔をチラリと見て思う。


『この病はどんなに高名な医者でも治せなかった、原因不明の奇病です。発症したが最後、発作的に妖力が体の中で暴れ出し、異常な発熱と呼吸困難に陥る。そしてそれは年齢を重ねるごとに重症化し、例外なく二十歳前後で発症者は死に至る』


 知ってしまった九条くんの病の真相。
 不安がない訳じゃない。怖くない訳じゃない。

 ……でも、

 九条くんは出来ないと言っていた、妖怪国の王子様を演じきった。
 それは彼が前を向いて進み始めた証に他ならない。

 なら私に出来ることは、ただ一つ。

 私も前に進む。
 絶対に九条くんを諦めたりしない。

 そんな思いを込めて、離さないと誓った九条くんの手を、私はぎゅっと強く握り締めた。