雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



「そ、そっか! じゃあ早速今からこのデザインでポスター作成に取り掛かるね! またね、まふゆちゃん!」

「あ、うん。またね!」


 そして私からスケッチブックを受け取ると、すぐさま脱兎のごとく走り去って行く。
 そのあまりの勢いについポカンとした後、私はジロリと九条くんに視線を向けると、その視線に気づいた九条くんもこちらを見た。


「どうしたの? ジッと見て」

「…………」


 とっさに「このタラシめ」という言葉が出かかったが、すんでのところで飲み込む。


「いや別にぃ? ただ私と九条くんって、美的センスが一緒だったんだなって思っただけ」

「美的センス? 別に俺、美術なんて全く興味無いから、そんなもの無いよ」

「へ?」

「雪守さんて考えてることがすぐ顔に出るから、分かりやすいよね」

「???」


 不思議なことを言って、九条くんが頬を緩める。
 え、何? 絵の好みと私の顔の出やすさとに、何か関係があるの??
 さっき私と一緒の絵を選んだのは、ただの偶然……だよね?


 それとも――?


「神琴さまぁ~ん」

「あ」

「はぁ……」


 また女子の猫撫で声が九条くんを呼ぶ。そんな女子達に溜息をつきながらもちゃんと付き合ってあげる九条くんは、なんだかんだで優しい男なのかも知れない。
 女子達の方に歩いていくその背中をぼんやりと見つめながら、先ほど浮かんだあり得ない仮説を頭の中で打ち消す。

 だって――、


『雪守さんって考えてることすぐ顔に出るから、分かりやすいよね』


 私の表情を見て、私がどの絵を気に入ったかが分かったとして、私が選んだから九条くんも選んだ、なんて。 
 しかも女子達をあしらいながらも、それが分かるくらいずっと私を見てた、なんて。


「~~~~っ」


 そんなの無い。

 ないない、絶対無い。


 ◇


 一部の臨時メンバーが九条くんの親衛隊だったのは誤算だったが、(おおむ)ね文化祭実行委員の出だしは良好である。それぞれの班の進捗を確認し、あらかたの指示も出し終えた。
 そろそろ自分の担当の仕事も進めようと、後のことは九条くんに任せて、私は生徒会室へと戻る。


「あ」

「おう、雪守も仕事か?」


 するとまるで壁のように積まれた書類の真ん中で、ぴょこぴょことド派手なツンツンの黄色い髪が揺れ動く。

 居たのはコワモテな容貌と三白眼が特徴の生徒会の問題児こと、夜鳥雷護(やとりらいご)だった。

 この間の生徒会で九条くんに燃やし尽くされた傷がまだ癒えないのか、ペタペタと顔中に貼られた絆創膏が痛々しい。
 しかし本人は至ってケロっとした顔で、大量の書類を(さば)いていた。