「まふゆ……」
「な、何……?」
今し方してしまった大胆な行動。
自覚はあるので、恥ずかしいしさっさと立ち上がりたいのだが、九条くんが倒れ込んだままがっちりと私の背中に腕を回していて動けない。
「なんでフリも出来たのに、キスしたの?」
「…………」
「それも〝額〟だし」
暗くて九条くんの顔はよく見えないが、はぁと溜息をつかれた。
それが心なしか残念そうに聞こえるのは、私の都合の良い解釈だろうか?
「そ……それは、ティダでのお返し、……だし」
「え」
しどろもどろに呟くと、九条くんがポカンとした気配がした。
そしてややあって、「あれ、気づいてたんだ」と小さく笑う。
――そう、ティダで乗ったボート。そこで私がひっくり返った時に感じた、おでこへの柔らかな感触。
その正体がなんなのかすぐには分からなくて、ようやく気づいた時、私の心臓はもの凄く騒がしかった。
だからさっきのは……、そのお返し。
「あー、だからってここでかぁ……。はぁ、参った」
「!? ……っ、ちょっ!?」
背中に回された腕の力が更にぐっと入り、私は九条くんの胸に倒れ込むような体勢になってしまう。
そして不意に以前も感じた柔らかい感触がまたおでこに触れた瞬間、私は真っ赤になって両手両足をジタバタさせた。
「なっ、なんでまたおでこにキスしたのっ!?」
「そしたらまた、まふゆがお返ししてくれるのかなって思って」
「はぁぁ!?」
なんで急にそんな意味わかんない行動を取るの!? 九条くんのこと結構分かったつもりでいたけれど、やっぱり全然分かんない!!
とにかく腕から抜け出そうともがくと、九条くんは苦笑して、私の背中に回していた腕を離す。
それにホッとしたような寂しいような複雑な気持ちになっていると、先に立ち上がった九条くんがスッと私へと手を差し出した。
「……やっぱりまふゆには敵わないな」
「??」
それはどっちかというと、こっちの台詞じゃない? やっぱり九条くんの真意は分からない。
でも何故だかその声色がとても切ない感じて、私は目を伏せ、差し出すその手を取って立ち上がった。
すると……、
