「あ……」
不意打ちで美しい金色の瞳と視線が合わさる。
心配そうにこちらを伺うその顔は、妖怪国の王子様ではなく、九条くんで――。
それを目にした瞬間、私も人間国のお姫様じゃない、〝雪守まふゆ〟が顔を出した。
「……どうしたの?」
観客席に聞こえないくらいの小さな声で私に囁く九条くん。
それに私は引き寄せられるように、九条くんの顔に自身の顔を近づけた。
「……っ、!?」
すると九条くんは薄っすらとだった瞳を大きく見開き、そして――。
『ありがとう』
そんな姫の台詞と共に、チュッと軽やかな音が静まりかえった劇場に響いた。
さぁ、これにて〝人間国のお姫様と妖怪国の王子様〟の物語は終了だ。
しかし暗転し完全に幕が下りた舞台を尻目に、ザワザワと観客席が波打つように騒めいた。
「え……? 最後のところ、本当にキスしてなかった……!?」
「なんか音してたよね!?」
「したした! えっ、じゃあまさかホントに……!?」
きゃあきゃあと騒がしい幕を隔てた向こう側の声を耳にしながら、私達はというと――……。
「「…………」」
幕が閉じて暗くなった舞台でお互い見つめ合う。
きっと今、私の顔は茹でタコのように真っ赤に違いない。暗くて本当に助かった。
