「なんだよ、盛り上がったんだから結果オーライだろ」

「だな。ギャル人魚の機転には舌を巻いたぜ」

「先生が過去一番、輝いてた瞬間だったよね」

「うぇぇぇん!! 寄ってたかって酷いですぅぅぅっ!!!」

「あはは……」


 容赦ないカイリちゃん達に、もう笑うしかない。

 しかし妖怪姿とはいえ、丸出しのお腹を生徒に見せつける行為は教師としてどうなの? でもそんなに盛り上がったのなら、どんな風か興味あるかも。

 ……なんて。

 先生が聞いたらまた大泣きしそうなことを考えていると、九条くんがみんなの前に進み出て、がばっと頭を下げた。


「先生達まで駆り出させて、本当にすみません! 全て俺が……」

「あーあー! 謝罪はいいから、とにかく今は舞台だって!」

「そうですよ、神琴様! 部長さん、舞台はどこまで進んだんですか?」


 そう言って朱音ちゃんが部長さんを見ると、彼女は表情を引き締めて私達に告げる。


「妖怪国と人間国の夜会が開かれたところまでよ。次は王子と姫の出会いのシーン。休む間もないけど、会長さんも副会長さんも準備はいいかしら?」

「はい、もちろんです!」


 部長さんの言葉に九条くんは頷いて、私に手を差し出す。


「行こう、まふゆ」

「うん」


 私を真っ直ぐに見つめる九条くんの顔は血色も良く、体調はすこぶる良さそうだ。
 それに内心ホッと胸を撫で下ろして、私は九条くんの手に手を乗せた。


「頑張ってください! 九条様、雪守ちゃん!」

「オレらまで出張ったんだ、絶対いい舞台にしろよ!」

「お二人ならきっとボクの腹踊り以上の歓声を観客から引き出せますっ!」

「みんな……本当にありがとう! 必ず成功させてみせるから……!」


 たくさんの応援を背に、私達は舞台へと向かう。

 中断し下ろされていた幕が、ようやく今また上がった――。