「ご存知でしょうか? 元々妖狐一族は、男が二十年に一度程度しか生まれぬ女系であることを。以前貴女が屋敷を訪れた際にも、男性の妖狐には会わなかったでしょう」
「え、あ。そういえば……」
確かにあの時相対したのは、巫女服を着た女性の妖狐のみ。男性の姿は無かった。
「けど女系であることと、九条くんの病気……。それが一体どう関係するっていうの?」
「実は一族にとってとても希少な存在である妖狐の男には、必ずある病を持っているという宿命があるのです」
「宿命……? その病っていうのが、まさか……」
「ええ、神琴様が患われている病。そして以前には神琴様の御父上である、紫蘭様も患われていた病でございます」
「……っ!」
やっぱりそう繋がるのか。
――〝紫蘭さん〟
お母さんや皇帝陛下と同じ日ノ本高校の生徒会役員だった人で、何よりも九条くんのお父さんである人物。
そして……。
『これをおまいさんがいつかティダに来たら渡してほしいと、10年以上前にある旅行者に渡されたんだべ』
魚住さんを通じて、九条くんの元に何かを渡るように動いていた人。
「この病はどんなに高名な医者でも治せなかった、原因不明の奇病です。発症したが最後、発作的に妖力が体の中で暴れ出し、異常な発熱と呼吸困難に陥る。そしてそれは年齢を重ねるごとに重症化し、例外なく二十歳前後で発症者は死に至る」
「――――……」
淡々と告げられる病の詳細。
それに私はまるで頭を殴られたような衝撃を感じ、その後の記憶がまるで無い。
狐面の姿が見えなくなってもただただ、私は呆然と立ち竦んでいた。
「――まふゆちゃんっ!!!」
「あ……」
そんな私が我に返ることが出来たのは、朱音ちゃんに肩を大きく揺さぶられたからだ。
朱音ちゃんはふわふわのピンク色の髪を揺らし、心配そうにこちらを覗き込んでいる。
