「……っ!? どういうこと!? 本物の朱音ちゃんはどこなの!?」
目の前の狐面に、私は警戒心を露わにして叫ぶ。
「朱音ならば先ほどの騒ぎを聞きつけて、今頃は必死で貴女を探している頃でしょうね」
「…………!」
じゃあ最初から私が朱音ちゃんだと思っていた人物は、この狐面だったってこと……!? 通りでどこか違和感があると思った。
でも、一体どうして……?
疑問が顔に出ていたのか、目の前の狐面はスッと私に向かって美しい礼をとる。
「私は朱音の後任を主様《あるじさま》より仰せつかった、九条家の暗部でございます。神琴様が舞台袖から離れた後に発作を起こされましたので、急ぎ貴女を朱音の姿に化けて呼び出させて頂きました。ご無礼を働きまして、誠に申し訳ございません」
「そ、そうなんだ……」
妙に丁寧な物言いに調子が狂う、が……。
『興がそがれた。妾も忙しいのじゃ、そなたらにこれ以上付き合ってはおれぬ。勝手にするがよい。……精々一日一日を大切にすることじゃな』
あのトンデモ当主、屋敷に乗り込んだ時はそんな風に言っていたけれど、しっかり朱音ちゃんの後任は用意していたんだ。
じゃあ夏休みに九条くんをティダへ連れ出したことも、筒抜けなんだろうか。
というかまさか、ずっと一緒に居た……?
「っ……!」
頭をよぎった想像にゾッと身を震わせるが、今はそれどころではない。
とりあえず九条くんの危機を真っ先に知らせてくれたのだから、少なくともこの狐面は私と敵対する意思はないのだろう。
警戒を解いてじっと目の前の人物を見ると、私の心の内が伝わったのか、狐面の女性はポツポツと話し出す。
「……主様の意向はどうあれ、私個人としては雪守殿の存在を有難く思っております。なにせ折角ご念願だった学校に通われているのに、寝たきりで終わってしまうのは忍びない。もうそう長くないお命なのですから……」
「え……」
淡々と紡がれる言葉。
しかし一点、聞き捨てならないものがあった。
何……? この人は今、なんと言った……?
〝もうそう長くないお命〟……?
