「へー、上手いね。これ君が描いたの?」
「はわっ! は、はいっ! そうです!!」
その〝誰か〟が感心したような声を上げて、朱音ちゃんに視線を向ける。
すると朱音ちゃんは一瞬にして顔を真っ赤にし、首振り人形のようにカクカクと首を縦に振った。
「ふーん」
それに対して彼女に声を掛けたこの男――九条神琴は、眉ひとつ動かさずに私の手の中にあるスケッチブックをパラパラと捲っている。ちょっと! 私が見ていたんですけど!?
「あわわ……」
その間も朱音ちゃんは九条くんを見つめて小動物のようにプルプルと震えており、とても可愛い。
……が、なんとなくムッときた。私の朱音ちゃんを一瞬で誑し込むとは。九条くんめ、恐ろしい男である。
「あ、これなんかいいんじゃない?」
「え、どれ?」
私がアホなことを考えている間に、九条くんがお気に入りの一枚を見つけたらしい。どれどれ、参考までに確認してやろう。
「これ」
「あ」
九条くんが指を差したのは、さっき私がいいと思った絵と同じ。
え? まさかの美的センスが同じなの??
一瞬よぎった思考を、いやいやと即座に否定する。ただの偶然でしょ。
とにかく九条くんも同じ絵がいいと思ったのなら、ポスターはこの絵で決まりだろう。なんてったって、生徒会長と副会長のお墨付きなのだ。他のヤツらの意見は知らん。役得である。
「へぇ偶然だね。実は私もこの絵がいいと思ってたんだ。よし、朱音ちゃん! ポスターはこのデザインでお願い!」
「あわっ!?」
名前を呼ぶと我に帰った朱音ちゃんが、赤い顔をそのままに私が示した絵を慌てて見やった。
