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『どうしてわたしは半妖なのかしら? 万が一この耳と尻尾が城外の者に知られてしまったら、その時わたしは……』
朱音ちゃんが仕上げた渾身の姫の部屋のセットを背景に、私は何度も練習を重ねたシーンを演じる。
初めての読み合わせの時はたどたどしいと指摘されたが、今ではすっかり感情を込めて台詞を発することが出来るようになった。
『ああ姫様、お労しや』
『ありのままの姿で外を出歩くことが叶わないとは、なんと不憫な』
侍従に扮した部員さん達も以前から上手かったが、更に演技に磨きがかかっていてすごい。
チラリと観客席に目線をやれば、みんなすっかり物語に入り込み、舞台に見入っているのが分かる。
あ、夜鳥くんに雨美くんだ。それに木綿先生もいる。
みんな本当にちゃんと観に来てくれたんだなぁ。
何故か彼らの横に部長さんも座っていて、それもなんだか笑いを誘う。
――パチパチパチパチ
見知った顔ぶれが居たことで少しずつ私の心にも余裕が出てきたところで姫の場面が終了し、大きな拍手の中、舞台が暗転する。
次は王子様のシーン、九条くんの出番だ。
「お疲れ、すごく良かったよ」
「ありがとう。最初めちゃくちゃ緊張したけど、九条くんのお陰で落ち着けたよ」
舞台袖で囁くように言い合って、舞台へと出ていく九条くんの後ろ姿に「頑張れ」と小さく声を掛けて見送る。
すると……、
「きゃあああああああっ!!!」
「神琴さま素敵ぃぃぃーーっ!!!」
「王子様姿、神々し過ぎるうううう!!!!」
舞台に九条くんが現れた途端、黄色い悲鳴がまるで爆発したかのように観客席のあちこちから上がった。
それにチラリと舞台袖から観客席を覗くと、中には王子様ルックな九条くんを見て意識を失ったと思しき女子も確認出来た。
相変わらず九条くんはものすごい女子人気なんだなぁ……。
「今更だけど私……。九条くんと恋人役なんてしたら、いよいよ命が危ないんじゃ……?」
「ええー? それはないよぉ」
「!」
