雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



「朱音ちゃん、どうしたの?」


 振り向いてもやはり私の頭に釘付けのままの朱音ちゃんに問うと、彼女はやっと視線を私の目に移した。


「そのティアラ、本物の宝石だね」

「え゛っ!?」


 突然驚くようなことを言われ、思わず私は全身鏡へと走る。
 すると鏡に映るのは、先ほども見た鮮やかな紫色の石が散りばめられた金細工のティアラ。

 このキラキラと輝く紫色の石が、本物の宝石……?


「ああ、アメジストだな。本物のティアラまで用意するなんて、部長やるじゃん」

「いや、やるとかそういうレベル!? 本物だとしたら一体いくらするの、このティアラ!?」


 てっきりレプリカかと思ったのに! 緊張で体が一気に震えてきた! お、落としたらどうしよう!? 
 そもそもこの明らかに上質な生地で作られたドレスといい、演劇部の資金源が本気で謎過ぎる……!!


「この分だと部長さん、王子様の衣装も相当こだわってるだろうね。神琴様がどんな風か楽しみだねぇ、まふゆちゃん」

「えっ!? う、うん……!」


 にこにこと朱音ちゃんに言われてドキリと胸が跳ねた。

 九条くんの王子様姿……かぁ。

 そんなの想像するまでもなく、似合っているだろうことは分かっている。
 なにせ彼は三大名門貴族の次期当主様。現実でも王子様のような存在なのだから――。


「あ、顔が赤くなってる。ホントまふゆって、顔に感情が出るよね」

「んなっ!? も、もうっ! 九条くんの話はいいから、早くステージに行こうよっ!」


 目敏く指摘するカイリちゃんに気恥ずかしくなり、私は熱い両頬を手で押さえて部屋を足早に出る。


「……わぷっ!?」


 しかしその瞬間、ドンっ! と顔に何かがぶつかり、私は体をよろめかせた。


「いたた……」

「あ、すみませ……まふゆ?」

「へ?」


 覚えのある声に名前を呼ばれ、軽く鼻を押さえて顔を上げた私。

 そしてその瞬間、思わず息を呑んだ。


「く、くじょ……」


 何故なら目の前には、まるで物語から飛び出したようなキラキラと眩いばかりの王子様、もとい九条くんが立っていたのだから……。