「居ねぇと思ったら、すぐこれだ。来て早々うるせぇぞ、木綿っ!!」
「あああ、大変なんですよおおおおおおおおっ!!!」
夜鳥くんの罵倒も聞こえていないのか、木綿先生は叫び続ける。
「今年の来賓が決まったんですよお!!! なんと、皇帝陛下だそうですっっ!!!!」
「――――は」
瞬間、騒がしかった生徒会室がしんと静まり、
「はああああああああああああああああ!!!?」
次には、先ほどの木綿先生にも負けない絶叫が学校中に響き渡った。
「はあっ!? 陛下?? なんで!!?」
「分かりません! 僕も来るということしか聞いてないんです!!」
「本気でなんで陛下なんだよ!? 去年は陛下の弟である皇弟殿下が来られてたじゃねーか!!」
「そうなんですよおお!! ちなみにその前の年も、そのまた前の年も皇弟殿下でした!!」
詰め寄る雨美くんと夜鳥くんに、木綿先生が涙目で返す。
……そうなのだ。
体育祭の来賓は、例年陛下の次に皇位を継がれるという、年の離れた陛下の弟である皇弟殿下が来られている。
皇弟殿下のお姿は私も去年の体育祭で初めて見たが、柔和でとても親しみやすい雰囲気のお方だった。皇帝陛下が思わずひれ伏してしまうような圧倒的な存在感を放つのとは対照的である。
しかし公務だって忙しいだろうに、どうして慣例を破ってまで陛下が??
『これでも親だしね。アンタがどんな風に学校生活を過ごしているのか気になるのよ』
ふと、脳裏にお母さんの言葉が浮かぶ。
ティダから一度も離れたことの無いお母さんが、わざわざ帝都まで体育祭を見に来る。
まるで二人が示し合わせたように感じるのは、私の考え過ぎだろうか……?
「てゆーか陛下の後を継ぐのって、なんで皇弟殿下なんだろうな?」
そこで夜鳥くんが発した唐突な呟きに、みんなの動きが一斉に止まる。