ここは日ノ本高校の生徒会室。
 今日も今日とて、私は張り切って生徒会のお仕事に励んでいる。


「さぁみんな! 今日こそは体育祭に向けての話し合いをやりましょう!!」


 バンっと勢いよく机を叩いて私が叫ぶと、配布した資料を見ていた生徒会の面々が驚いたようにこちらを見た。


「なんだよ、雪守。久しぶりに生徒会に顔出したかと思ったら、やる気満々じゃん」

「だって夏休み明け最初の生徒会で話し合いたかったことが演劇部の舞台稽古でマルっと抜けちゃったんだから、仕方ないじゃない」

「……で、今日はその演劇部の舞台稽古はいいの? 九条様まで」


 雨美くんがお誕生日席に視線を向けて言うと、そこに座る九条くんが頷く。


「ああ、今日は明日の衣装合わせに向けて準備をするらしい」

「だから稽古はお休み。私と九条くんは自主練しててって、部長さんに言われたんだよね」


 夜鳥くんと雨美くんに説明しながら、私は昨日の練習帰りに部長さんに言われた言葉を思い出す。


『会長さんと副会長さんにはとびっきりゴージャスな衣装をデザインしたから、衣装合わせ期待しててねぇん!!』

『あはは、楽しみにしておきますね……』


 今にも踊り出さんばかりにウキウキと話す部長さんに昨日は苦笑するしかなかったが、演劇部の財源ってどうなっているんだろうと今なら思う。
 少なくとも学校から支給される部費だけでは、そんな豪華な衣装を用意出来ないはずなのだが……。はて?


「そっかぁ、もう衣装合わせの時期なんだ」


 ふと考え込んでいると、雨美くんが感慨深げに呟いた。


「あのポスターが突然貼られた時は学校中大騒ぎだったけど、あれからもう2週間も経つんだね」

「だな。なんだかんだ時が過ぎるのは、はえーよなぁ」


 ……そうなのである。
 早いもので演劇部で稽古を始めてもう2週間が過ぎた。

 練習室での読み合わせから始まった稽古も今では舞台へと場を移し、とにかく私は必死で〝人間国のお姫様〟を演じられるよう、昼夜を忘れて舞台に没頭していた。