雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



 ◇


 ――コンコン


「はい……、え?」


 学生寮二階の一番奥まった部屋。
 その部屋のドアをノックすると、ドアから少しだけ顔を覗かせた九条くんが私を見て目を丸くした。

 そりゃあそうだろう。
 同じ寮に住んでるとはいえ、普段は転移と妖力を使う時以外、決して私は九条くんの部屋を訪れたりはしないのだから……。


「どうしたの? あ、今日のことは本当にごめん。読み合わせの途中で帰っちゃって」

「ううん、それはいいの。それより……」


 すっかり夜も更け、九条くんは普段のシャキッとした制服姿と違い、今は少しだるっとした部屋着を着ている。そのギャップにほんのり心ときめくが、今はそれどころではない。
 私はキリッと表情を引き締めて、腕に抱えていたものを九条くんの前に差し出した。


「せっかくだし、この前ティダで買ったお菓子一緒に食べない? ジュースもあるから話しながら、ねっ!」

「え、いや俺は……」

「いいから、いいから!」


 困ったような九条くんを押しのけて、ぐいぐいと私は彼の部屋へと侵入する。
 そして相変わらずの本だらけの部屋に辛うじてある小さなテーブルに、腕に抱えていた箱と缶をドンッと置いた。


「あ、それシークヮーサージュース? レモネードにも入ってた」


 どっかりと座り込んだ私に九条くんも観念したのか、向かいに座って私が置いた缶を一本手に取る。


「うん、私結構シークヮーサー好きなんだよね。酸っぱいけど」

「俺も好きだな。うん、美味い」


 プシュっとプルタブを開けて九条くんがシークヮーサージュースを飲む。
 それを微笑ましく眺めながら私も箱からちんすこうを取り出し、ボリっと齧った。
 ああ、美味しい。お店には色んな味のちんすこうが売ってたけど、私は塩味が一番好きかな。


「……あ、」


 (せん)無いことを考えていると、不意に足に何か冷たいものが当たる。
 それに不思議に思って視線をテーブルの下へと向けると、見覚えのある古びた四角い缶箱が置いてあった。

 これは……、


『んだ。なんでも開けずに、おまいさんの()に渡してほしいと言ってたな』


 ティダで魚住さんに渡された、九条くんのお父さんである紫蘭さんが彼に託したものだった。

 九条くんのお母さんにということだったけど、一体中には何が入っているんだろう……?
 気になってついジッと見ていると、「まふゆ」と九条くんが私を呼んだ。