――彼女はそのあだ名の通り、白髪のおばあちゃんだったらしく、まるで本物の九条くんの祖母のように彼のことを可愛がっていたそうだ。
けれどある日、九条くんが自身の両親のことをばあやさんに尋ねたことがあり、その日以降、ばあやさんは屋敷から忽然と姿を消してしまったのだという……。
「そんな……それってどう考えても……」
「……うん。葛の葉様が何かしたのは間違いないんだろうね」
「っ、」
あのトンデモ当主、やっぱり九条くんが小さい頃からトンデモだったのか……!
幼い子どもが自分の実の両親について関心があるのなんて当然だろうに。
本当につくづく、次会う機会があったら落とし前をつけてやりたい気分である!!
……まぁ、とはいえ次なんて正直ご免被りたいが。
「でもそのばあやさんの話と、舞台の役。何が関係あるの?」
「……多分、神琴様はこの〝ばあや〟の体験がトラウマになってる。自分の不用意な行動が相手に齎す影響を、とても恐れていらっしゃるの」
「だから病のせいでいつ命を落とすかも分からない状況にも関わらず、姫に想いを告げた王子の行動が理解出来ない?」
「うん、恐らくね」
「…………」
『俺には絶対に出来ない選択だ。現に王子を喪って姫は泣いていた。俺はいずれ相手を悲しませ傷つけると分かっていて、自分の幸せだけを追い求めることなんて――絶対に、出来ない……!』
王子は重い病に蝕まれており、姫と添い遂げることは無理だと初めから分かっていた。
『姫、病は確実に私の身体を日々苛んでいる。恐らく貴女と添い遂げることは叶わないでしょう。けれどそれでも私は貴女に伝えたい。姫、私は貴女を愛してる』
だからそんな〝未来〟が曖昧な存在が、人を愛してはいけない。
想いを伝えてはいけない。
きっと九条くんはそう言いたかったのだろう。
「――――」
でも、私は――……。
