雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



「……切ない」


 物語を反芻(はんすう)し、私は目を閉じた。

 どれだけ枷があろうが、互いへの愛を貫き通した姫と王子。
 結果周囲に及ぼした影響は甚大で、二人の行いを手放しに素敵だとは言えない。

 でも、私にも周りなんて見えないくらいに情熱的な恋をしてみたいという憧れは心のどこかに存在する。
 きっと部長さんもそんな思いを込めて、この台本を書いたのだろう。

 いきなり主演を頼まれたり、キスシーンがあったりで、抵抗感ばかりが先走っていたが、実際に最後まで目を通してみると、なかなかどうして完成度が高く面白いと感じた。
 これなら朱音ちゃんが素人を代役に立ててまで舞台を続行させたい気持ちも理解できる。


「……ま。理解したことと、納得することは、別ものだけどね」


 呟いて私は自身の唇をそっと指でなぞる。

 片思いしている相手と主演の舞台だなんて、良いのか悪いのか……。
 ていうかキスって、本当にするの? それとも、ただのフリ?


 ――九条くんと、キス。


「…………っ!!」


 うあああああっ!! ダメダメっ!! 想像したら、また羞恥心がぶり返してきたっ!!
 ゴロゴロと激しくベッドの上を転がると、首につけていたホタル石のネックレスも動きに合わせて弾む。
 するとそれが視界に入り、九条くんが頭をよぎってまたベッドを転がる。エンドレスだ。


「はぁ、はぁ……」


 ああ、私。こんな調子で本当に主演舞台だなんて、やれるのかなぁ……?