「まふゆっ!! やっぱりここに居たんだな!!」
「あっ、九条くん!!」
と、そこでまた慌ただしく部室のドアが開き、救世主が現れた。
息を切らせた九条くんである。
その様子から察するに、恐らく九条くんも今ほど舞台主演の件を知ったのだろう。
よかった! 私だけじゃこのまま言い負かされて、丸め込まれるところだった!
味方の登場に、私は必死に九条くんに縋りつく。
「九条くんも舞台のことで部長さんに文句言いに来たんだよね!? 舞台経験もないのに、たった一カ月で主演なんて絶対無理だって!!」
「ああ、それは俺も思う。けど……」
「けど??」
私の言葉に同意しつつも、表情を曇らせる九条くん。
なんだろう。なんかまた嫌な予感……。
「まふゆ、落ち着いて聞いてほしい。実はそのテーブルにあるポスター、もう校舎中に演劇部が貼り出している」
「へ?」
「まふゆが一向に生徒会室に来ないから不思議に思っていたら、俺もそのことを後から来た夜鳥に知らされたんだ。俺達が主演の舞台をやるって、もう学校中が今その話題で持ちきりだ」
「え?」
それは、つまり……?
「やらないなんて今更言えないでしょうねぇ。生徒会長さんと副会長さんの舞台なら、見たい人はいっぱいいるんですもの」
「やっぱ違いますなんて言ったら、暴動が起こるかも」
「生徒会としては自分達が発端で風紀が乱れるのは、マズいんじゃないのか?」
「…………」
口々に勝手なことを神妙な顔で言う、演劇部三人組。
一体誰のせいでと思わなくもないが、それ以上に私の頭の中は別のことでいっぱいだった。
――〝姫、王子にキスをする〟
え、じゃあ何? もう取り消せないってこと……?
つまり私は九条くんとキス。大勢が見てる前でキス、キス……。
「本当にごめんなさいねぇ、副会長さん。でもその分お礼にすっごいものを用意してるからって……あら?」
「まふゆ?」
九条くんが訝しんで私の肩へとそっと手を伸ばす。
しかしそれになんの反応出来ないまま、そのままふらりと私の体は後ろに倒れた。
――バターンッ!!
「きゃあ!! まふゆちゃーんっ!?」
「うわっ!? 頭から湯気出てんだけど!?」
……ダメだ。頭のキャパシティ。完全に……超えた。
◇
一難去ってまた一難。
あっという間に過ぎ去った夏休みに名残り惜しさを感じる暇もなく、私の日常はまたハプニングだらけになりそうだ。
