雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



「でもねぇ……。ちょっと奇をてらい過ぎたみたい。部員達言われちゃったわ。『役に入り込めない』って」

「はぁ……」


 まぁ確かに〝半妖〟だの〝重い病〟だの、大多数には縁の無いものだろうし、そう言う部員達の気持ちも分かる。


「部員さん達もすごく悩んでたみたいだけど、舞台一カ月前っていうギリギリのタイミングで、ついに降板を決めたみたい」

「そうなんだ……」


 しゅんと落ち込んだ様子で話す朱音ちゃんに、ズキリと胸が痛んだ。
 朱音ちゃんの舞台を良いものにしようと頑張っていた姿はよく知っている。私だって出来るものなら、手助けしてあげたい。

 でもだからと言って舞台に、しかも主演として立つだなんて……。


「――――っ!!?」


 と、そこで話しながらパラパラと台本を捲っていた手が、あるページで止まる。何故なら……、

〝姫、王子にキスをする〟

 そうそこには書かれていたのだ!!


「ちょっ、キスシーンまであるのこの舞台!!? じゃあ無理むり!! 最初っから無理だったけど、もっと無理っ!!!」


 台本をぐしゃぐしゃに握り締め、私は発狂せんばかりに叫ぶ。


「……まふゆちゃん」


 するとそんな私の手をぎゅっと握って、朱音ちゃんがまるで天使かのように可憐に微笑んだ。


「大丈夫だよ、わたしこの台本を見た瞬間に直感してたの。この姫と王子はまふゆちゃんと神琴様しか演じきれる人はいないって。二人のキスシーン、わたし見てみたいなぁ」

「っう、ぐ!」


 キラキラと眩しい笑顔に、思わず二つ返事で了承してしまいそうになる。
 だって朱音ちゃんは私の天使。頼みならなんだって聞いてあげたいが……。


「いやいや! いくら朱音ちゃんがそう言っても!」


 さすがに今回のは無茶振り過ぎじゃない!?
 そう叫ぼうとして、しかしその前にずっと私達の話を黙って聞いていたカイリちゃんがおもむろに口を開いた。


「別に今更キスシーンの一つや二つ、照れなくていいじゃん。アンタら普段の方がよっぽど恥ずかしいことしてるし」

「いやいやいや!! カイリちゃんんん!?」


 キスより恥ずかしいことって、一体私と九条くんは普段何をしているって言うの!? 
 ていうかもう、二人の中で私と九条くんが引き受けるのは当然みたいな流れになってるの何!? 部長さんはニコニコ笑ってるだけだし、圧倒的にこの場に味方が不足してるっ!!