いかんいかん、部長さんのペースに危うく呑まれるところだった!
今も本来なら生徒会の時間だというのに、わざわざ演劇部の部室まで来た本題を切り出すべく、私は懐に隠し持っていた例のものを取り出した。
「このポスター、一体どういうことですかっ!!?」
バァン!! と〝主演、九条神琴・雪守まふゆ〟とでかでかと書かれた舞台告知のポスターを、私はテーブルに叩きつける。
生徒会室へと向かう途中、掲示板にポスターを貼っている生徒がいたので何かと見てみたらこれだったのだ。
瞬間絶叫した私は、有無を言わさず生徒からポスターを取り上げ、こうして部室へと直行したという次第だった。
「ああ。早速見てくれたのね、そのポスター。ちょうどほんのついさっき刷り上がったばかりなの。ごめんなさいねぇ、報告が前後してしまって。本当に急で悪いんだけど、うちの部が今月末にやる舞台の主演を副会長さんと生徒会長さんにやってほしいのよ」
「いや、前後したとかいう問題じゃないんですよ!! 私舞台経験なんて無いですし、そんなの無茶ですよ!! そもそも部員さんはどうしたんですか!? その方達差し置いて私達が主演だなんて、おかしいじゃないですか!!」
私の剣幕に部長さんはしゅんと眉を下げて、首を横に振る。
「実はその部員達が自ら役を降りたのよ。『自分達では演じきれない』と言って」
「へっ……? こんな直前に役を……?」
まさかの言葉に私は狼狽える。
が、しかし……。
「現役の演劇部員が演じきれないほどの難役なら、何故その代役が私達なんですか? さっきも言ったように、私は演劇未経験のずぶの素人ですよ?」
「アタシも最初はそう思ったの。……でもね、貴女達ならば主演の役柄にピッタリだと、〝とある部員〟から推薦があったのよ」
「と、とある部員からの推薦……?」
なんだろう? なんだかイヤーな予感がする。
まさか、まさか……。