――ドドドドドドドッ!!!
「うわっ!? なんだあ!?」
「えっ、雪守さん!?」
廊下を爆走する私に対し、歩く生徒達がすれ違う度に驚いたようにこちらを凝視するのを感じる。
普段なら走るなと叱る側だが、しかし今はそれどころではない……!
私はそのまま全力疾走で走り切り、本校舎と隣接する部活棟にある演劇部の部室をガァン!! と、ドアを蹴破る勢いで開いた。
「あらぁ副会長さぁん、ご機嫌よう。今日も一日忙しそうだったのに、放課後になっても元気ねぇ」
「はぁはぁ……、は、は、は……」
荒げた呼吸のせいで返事もままならないが、目の前には見覚えのあり過ぎる大柄なガシャどくろのオネェさん――六骸千亞希氏(高3)が、優雅に足を組んで金の縁取りのされたソファーに座って紅茶を飲んでいる。
え? ここは〝部室〟……?
見るからに手触りの良さそうなふっかふかの絨毯に、ロココ調の紫と金で統一された煌びやかな家具。広々とした部屋の中央にあるラウンドテーブルの上には、これまたエレガントなティーセットが並べられている。
まるで西洋のお貴族様がお茶会とかしていそうなゴージャスルームなんですが、それは。
後夜祭の時に入ったのは衣装部屋だったから、まさか部室がこんなだとは思わなかった……。
「あの……、ごきげ……とか、言ってる場合じゃ……! はぁ、はぁ……」
「まぁまぁ、そんなに息切らしちゃってぇ。喉乾いたでしょ? 紅茶でも飲んで落ち着きなさいな」
「あ、どうも……」
慣れない異空間にキョドりつつも荒げた呼吸を整えていると、部長さんは繊細な作りのティーポットから、これたま繊細そうなティーカップに紅茶を注ぎ、私にそっと渡してくる。
それを私は有難く受け取って、ごくりと一気に飲み干した。
「……!!」
すると瞬間、口に広がる芳醇な香りに私は驚き目を見開いた。
「あ、美味しいです! 紅茶って普段あんまり飲まないんですが、こんなに飲みやすいんですね!」
「うふふ、それは西洋から取り寄せてる特別な茶葉を使っているのよ。副会長さんのお口に合ってよかったわぁ」
「へぇー西洋の……って、じゃなくてっ!!」