待って! このパターン今日二回目なんですけど!?
毎回九条くんのペースに流されっぱなしで、情けないことこの上ないが、しかし毎度毎度爆弾発言をするこの男が悪いんだから仕方がない。
一体どれだけ秘密があるんだ、この男は。
〝俺もその寮に住んでる〟って、通常寮に入るのは私のように実家が遠方にある者か、経済的な理由で寮に入らざるを得ない者かのどっちかである。
それでいくと九条家のお屋敷は高校からもほど近い帝都内にあると聞くし、日ノ本帝国トップクラスのお金持ち一族が経済的に困窮などあり得ないだろう。
つまり九条くんには、寮に入る理由なんて本来何ひとつ無いのだ。何か訳ありなのだろうか?
「……なんで寮生活なのかって、聞いてもいいの?」
横を歩く九条くんを見上げる。その涼しげな横顔からは、なんの表情も読み取れない。
「まぁ、普通気になるだろうしね。ちゃんとした説明は出来ないけど、〝家庭の事情〟……かな」
「ふぅん?」
家庭の事情……ね。無難に誤魔化されたな。
なんか昨日も保健室でそれっぽい含みのあることを言っていた気がするが、それにしてもまさかあの九条くんが寮に入っていたなんて、まだ信じられない。
「いつから寮生活なの? 最近?」
「入学当初からだよ」
「!?」
まさかの一年以上前から……!?
私も入学当初から寮暮らしなのに!!
「全然、気がつかなかった……」
素直にそう言えば、九条くんが笑う。
「噂になるのを避けたかったからね。特別に食事も風呂も部屋で済まさせてもらっているんだ。何より通学する以外は、体調が悪くて部屋から出ないことの方が多いし、雪守さんが気づかなくても当然だよ」
「そうなんだ……」
基本的に寮生は寮内の食堂でみんな一斉に食事をとる。お風呂も大浴場があるので、備え付けの浴室はあまり使わない。
こんな名門一族の次期当主様が寮暮らし。そりゃあ知られれば騒ぎになりかねない。
そんなリスクを冒してまで寮生活をする家庭の事情とやらがどんなものなのか、私には皆目検討はつかない。……まぁ検討がついたところで、私が九条くんに何かしてあげられる訳ではないけれど。
なら別に九条くんの事情を知る必要は無い。無いはずなのに……。
「…………」
なんだかさっきから、胸の辺りがムカムカモヤモヤする。でも別に食あたりではない筈だ。
だったら私、どうしちゃったんだろう……?
