「いや、あたしは寮じゃなくて、帝都に住む父さんの知り合いの家に下宿させてもらってるから」
「ええっ!? 何それ!? 知り合いって、どんな人!?」
まさかの言葉に私が叫ぶと、カイリちゃんが淡々と教えてくれた。
「魚料理のシェフやってるおじさんとその奥さん。父さんの卸す魚を気に入ってわざわざティダから方舟使って取り寄せてくれてて、結構長い付き合いなんだ」
「へぇー、そんな店が……」
ティダの魚を使ったお店が帝都にあっただなんて、知らなかった。
夏休みの間にみんなすっかりティダの魚を気に入っていたし、これは是非一度食べに行ってみたいところだ。
「えー、でもそっかぁ。カイリちゃんも寮なら、毎日部屋に遊びに行こうと思ったのになぁ……残念」
「それ聞いて寮を選択しなくてよかったと、今心の底から思ったよ」
しょんぼりとする私に対して、カイリちゃんはツンとそっぽを向く。
このすげない感じ、なんだか懐かしい。
「えへへへ」
「いやなんでそこで嬉しそうにニヤついてんだよ? ほんとアンタって、相変わらず変なヤツだよね……」
「うん、その下宿先のお店にも絶対行くからね」
「言うと思った。けど絶対やめて」
呆れたように溜息をついているが、その目は困ったように泳いでいる。
そう言うカイリちゃんこそ、素直じゃないのは相変わらずみたいだ。
そうして和やかな空気が部屋に流れたところで、木綿先生が「さて、みなさん」と声を上げた。
「積もる話は尽きないでしょうけど、時間も押してますし、そろそろ僕達はお暇しますね」
「あ」
先生の言葉に時計を見れば、確かにカイリちゃんが来てから既に30分以上が過ぎていた。
今日の生徒会の議題は体育祭の話の予定だったが、これは明日以降に持ち越しかな。
「ごめんねカイリちゃん、長々引き留めちゃって」
「いや、こっちこそ生徒会の邪魔して悪い。でもアンタらと話せてよかったよ」
「次はどこ行くんだ?」
木綿先生と共に生徒会室を出て行こうとするカイリちゃんに、そう夜鳥くんが投げかける。
するとカイリちゃんが何故だか微妙な顔をして、それに答えた。
「あー……。次は演劇部、ですよね? 先生」
「はい、部長さんが部室で待っているそうですよ」
「え?」
「もしかして魚住さん、演劇部に入るの?」
同じことを思ったのだろう。
雨美くんが問いかけると、カイリちゃんが「ああ」と頷いた。
「入部するつもり。とゆーか、演劇部に入部するのが入学の条件でもあったというか……」
「? というと?」
九条くんが不思議そうに首を傾げる。
するとどういう訳か、そこで木綿先生が苦笑して話し出した。
