「でもさぁ。ボク聞いたことあるけど、途中転入って、一般入試よりも難易度高いんでしょ? それを突破するなんてスゴイよね、魚住さん!」
「え、あ。いや、それは……」
「へぇ、そうなのか! 見かけによらず、やるじゃねぇか! ギャル人魚!」
「ちょっ、やめろって……!」
明るく背中をバンバンと叩く夜鳥くんに、カイリちゃんは迷惑そうに顔を顰める。
するとそれを見遣って、九条くんが口を開いた。
「そもそも日ノ本高校は、基本的に途中転入を受け付けていないからね。魚住さんは歌を評価されてということだし、例外中の例外ってことなんだろう」
「でも例外なのも分かるよ! カイリちゃんの歌声、心が揺さぶられるくらい本当にすごかったんだもん!!」
九条くんの言葉に力強く頷いて、私はあのザンの森の入り江で歌っていたカイリちゃんの姿を思い出す。
月明かりに照らされて響く彼女の歌声は、まるでティダの満天の星のように澄んでいて、とても美しかった――。
「あ、だから、いや……」
「?」
しかしカイリちゃんは誉めそやす私達を見て、少し気まずそうに首を横に振った。
「どうしたの?」
それに私が首を傾げると、カイリちゃんは意味ありげにチラリとこちらを見て言った。
「その……、あたしの歌を学校側に評価してもらったのは確かなんだが……。実は特別に試験を受けられるよう取り計らってもらえたのは、全部風花さんのおかげなんだ」
「えっ? お母さん? どういうこと??」
カイリちゃんの転入にどうしてお母さんが絡むのか? 私は驚き目を見開く。
するとカイリちゃんがおずおずとしながらも、説明してくれた。
「実は……海神の御成が収束した後、あたしが学校に通おうと思ってること風花さんに相談したんだ。そしたら『わたしは日ノ本高校に〝強いツテ〟があるから任せなさい』って言われて……」
「それで実際に転入試験を受けれるようになったってこと?」
「ああ」
私の問いにこくんと頷くカイリちゃん。
その表情から冗談や嘘を言っているようには見えないし、それは本当なんだろう。
「すげぇな風花さん」
「皇帝陛下ともめちゃくちゃ仲良さげだったし、本当に何者なんだろうね?」
「うん……」
雨美くんや夜鳥くんが探るようにこちらを見てくるのに、私は苦笑する。
長らくティダの田舎に引っ込んでいるお母さんに〝ツテ〟なんてものがあるなんて驚き……と、以前までの私なら思っていただろう。
――でも、今は違う。
