「カ、カイリちゃん!? どうしてここに!?」
「お前ティダにいたんじゃなかったのかよ!?」
「そうだよ! 船を買うお金を貯めるって話はどうなったのさ!?」
帝都に居るはずのないカイリちゃんが目の前に現れ、驚いた私と夜鳥くんと雨美くんは彼女に詰め寄る。
「あぁーっ!! みなさん、待ってください! 魚住さんのことは僕が説明しますから!」
するとそう叫んでカイリちゃんの後ろからバタバタと生徒会室へと入って来たのは、ちょうど今は転入生を案内しているはずの生徒会顧問――木綿疾風先生だった。
それに夜鳥くんが怪訝そうに片眉を上げる。
「なんだよ、木綿。居たのかよ?」
「そうですよ。先生は転入生を案内してたんじゃ」
「いやぁ……」
口々に疑問を浮かべる私達に苦笑して、木綿先生がカイリちゃんにチラリと目配せして言った。
「実はその転入生こそが、この魚住さんなんですよ」
「ええっ!?」
「マジか!」
制服を着てここに現れた時点で薄々察してはいたが、予感が確定事項となり、私達はまた驚愕の声を上げる。
『絶対に父さんに新しい釣り船をプレゼントするって夢。その為にいっぱい勉強して、たくさん金を稼いでやるんだ!』
確かに彼女は以前ああ言っていたから、勉強がしたいのは知っていたが、まさか帝都に来るとは思わなかった。
なにせカイリちゃんは、とても熱心に漁師であるお父さんのお仕事を手伝っていたのだから……。
「お父さんのことはよかったの? 帝都には一人で来たんだよね?」
「ああ、父さんのことなら大丈夫」
私の問いに、カイリちゃんがコクリと頷いた。
「むしろ父さんはあたしが帝都に行くのも大賛成で、めちゃくちゃ喜んで送り出してくれたんだ。せっかく勉強するなら、設備や環境がきちんと整ったとこにしろって言ってさ」
「そっかぁ、魚住さんがそんなことを……」
私は麦わら帽子を被った、あの柔和でいかにも人が良さそうな男性の顔を思い出す。
あの優しいお父さんならば、確かにカイリちゃんがやりたい道を全力で応援してくれそうだ。