「――ごめん、そんな顔しないで。俺は調査票には内部進学と書くよ。雨美や夜鳥と同じで、俺もまふゆと一緒に日ノ本大学へ進学出来たら嬉しいかな」
ふわりと微笑まれ、私はハッと強張っていた表情を緩める。
「う、うん。……私も、九条くんと進学出来たら嬉しいよ」
そう言って、私は精一杯の笑顔を作った。
けれど一度沸き起こった胸騒ぎは、なかなか鎮まってはくれない。
『……父は貴方に名乗っていましたか?』
『そうだ、九条紫蘭。彼はそう名乗ったべ』
思い出すのは、ティダを離れる時の九条くんと魚住さんの会話。
紫蘭さんは九条くんのお父さんだった。
義理の母だという、あの妖狐一族のトンデモ当主――九条葛の葉とは違う、彼の本当の親。
つまり九条くんは、お父さんと同じ病を患っているということ。
『そうか……親友。私達は親友だったのだな』
『ええ、そうよね。國光と紫蘭はいつもバカばっかりやって、こっちが羨ましくなるくらい仲が良かった本当に……』
紫蘭さんが今どうしているのか、皇帝陛下にもお母さんにもティダでは聞きそびれてしまった。
でも九条くんはきっと、紫蘭さんの今を知っている。あの時、そんな表情をしていた。
そしてそれは、私の予感が正しければ――……。
「あ? そういや進路調査票といやぁ、木綿はどうした? まだ来てねぇじゃん」
「え、あれ?」
「ホントだ」
ハッと声を上げる夜鳥くんにつられて、私と雨美くんは生徒会室を見渡す。
今日は妙に静かだなぁと思ったら、木綿先生が居なかったのか。全然気づかなかった。
これ本人に言ったら、「僕はそんなに影が薄いですか!? 酷いですうぅぅ!!」ってまた大騒ぎしそうだな。
そんなことを考えていると、九条くんが「あ」と呟いて、申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめん。そういえば俺が木綿先生から伝言を受けていたんだった。先生は転入生に校舎内の案内をするから、生徒会に来るのは遅れるそうだよ」
「「「転入生??」」」
