「副会長、今日の議題は?」

「はい、生徒会長」


 夏休み明けの最初の授業が終わった放課後。

 約1ヶ月半振りの生徒会が始まり、生徒会副会長である私――雪守(ゆきもり)まふゆは、事前に作成してきた資料をそれぞれ目の前に座る生徒会役員達に手渡す。


「二学期最初の議題は、来月末に行われる体育祭についてです。主だって動くのは、体育委員なのですが……」

「はぁぁーー」

「?」


 話している最中に大きな溜息が聞こえて顔を上げると、犯人は書記の雨美(あまみ)水輝(みずき)くんと、会計の夜鳥(やとり)雷護(らいご)くんだった。
 二人してだらしなく机に突っ伏している。


「夏休みが終わったと思ったら、今度はもう体育祭かよ。はえーな」

「楽しかったよねぇ、ティダ。風花(かざはな)さん、何してるかなぁー?」

「あはは」


 まだティダから帝都に戻って数日。
 夏休みの余韻が抜けないのか、受け取った資料を読もうとせず、だるだるモードの夜鳥くんと雨美くんに私は苦笑する。


『なんでみんながティダに居るのぉーーっっ!!?』


 そんな私の絶叫から始まった今年の夏休み。

 ひょんなことから生徒会全員(プラス朱音(あかね)ちゃん)が私の生まれ故郷ティダに押しかけてきて、一時はどうなるかと思ったが、蓋を開けてみれば最高の夏休みで終わった。

 授業を受けて、勉強して。

 学生としては帝都(こっち)の生活こそが本来の日常ではあるのだが、いかんせん1ヶ月近くも万年常夏の島で毎日何かしらのレジャーをして楽しんでいたのだ。
 恋しくなるのは私も同じだった。


「お母さんならどうせ私が居なくなったのをいいことに、今頃家を好き勝手に荒らしてゴロゴロしてるよ」

「ははは、それはなんだか目に浮かぶようだな。でもまふゆ、風花さんは確か別れ際、『体育祭は見に来る』って言ってたんじゃなかったかな?」


 生徒会室のお誕生日席――つまり生徒会長席に座る我らが生徒会長九条(くじょう)神琴(みこと)くんが、資料を読む手を止めて私を見る。


「ああ、そういえば」

『まふゆこそ体には気をつけて頑張んなさい。それに今年の体育祭にはわたしも応援に行くから、また秋には会えるわよ』


 確かにあの時お母さんはそう言っていた。