校舎を出ると、すっかり外は真っ暗になっていた。
「はぁ……、今日はどっと疲れた」
「途中から会議になってなかったしね。まだ決めなきゃいけないことも多いし、明日続きを頑張ろうか」
「…………」
溜息をついた私に対して飄々とそう話すのは、先ほど全てを燃やし尽くして会議どころでなくした張本人である。
〝お前が言うな〟という思いを込めて、私がその完璧な美貌をジトっと睨みつけると、九条くんがキョトンと不思議そうに首を傾げた。
「ん? どうしたの? 早く帰らないと、夕飯に間に合わないよ?」
「わっ、分かってる!!」
クスクス笑いながら言われてしまい、恥ずかしくなって私はわざと大声を出した。
そうして九条くんに促されるまま、私達は並んで夜の街を歩き出す。
「もうすぐ寮の門限になるな、急ごうか」
「……ぅん」
なぜ私が九条くんと一緒に帰ることになったのか?
それは数分前に遡る――。
◇
「はぁー九条様やべぇー。燃えた、超燃えた」
「もぉー制服煤だらけじゃーん。雷護のせいなんだからね」
「みなさん、気をつけてお帰りくださいね。そして僕は保健室に行って来ます」
「み、みんな、今日はお疲れ……」
九条くんによって全てを燃やし尽くされ、今日の生徒会はしっちゃかめっちゃかで終了した。
みんながヨロヨロと体をふらつかせて解散していくのを引きつりながら見送っていると、九条くんに声を掛けられる。
「雪守さん、もう遅いし送るよ」
「いや寮まで近いし、わざわざ悪いから大丈夫」
「俺もその寮に住んでるから気にしないで」
「はぁっ!!?」
断わりの言葉を探していたら、不意打ちで飛び込んできた耳を疑う発言に、驚きのあまりバカでかい声で叫んでしまった。
しかし九条くんは動じるでもなく、涼しい顔のままだ。
「そういう訳だから、ほら行こうか」
「え!? ちょっ……!?」
九条くんが私の右手を恐ろしく自然かつスマートに取り、そしてあれよあれよという間に、気がつけば校舎の外へと連れ出されてしまう。