雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



「あたしが家と仕事の往復しかしてないの、アンタも知ってるだろ? そんなあたしに浮いた話なんてある訳ないじゃん」

「それはそうだけど、花火大会では雨美(あまみ)くんと楽しそうに話してたじゃん! カイリちゃん的にはどう思ってるのかなって!」

「はあ?」


〝雨美〟って……、(みずち)のことか。
 確かにアイツには海神の御成の時にめちゃくちゃ世話になったし、それなりに話したけど……。


「いい奴とは思うけど、別にそれだけだよ」

「だぁーーっ! それ! それが恋の入り口なんだよ!! 現に私も最初は九条くんのこと〝いい人〟って……あ゛」


 失言に気づいたのか、まふゆは口を覆って耳まで真っ赤にした。自分で墓穴を掘ってどうする。


「わぁ! まふゆちゃん! ついに自覚したんだ!!」

「え、〝ついに〟って何!? 朱音ちゃん!? まさか私の気持ち、前から知って……!?」

「食後の紅茶です。ミルクとシュガーはご自分で調整されてくださいね」

「あ、どうも」


 ぎゃいぎゃいと騒がしい二人を放って、パンケーキを完食したあたしは、運ばれてきた紅茶を啜る。
 うん、美味い。普段はさんぴん茶しか飲まないけど、たまにはこういうのもいいな。


「そう言う朱音ちゃんはどうなの!? 夜鳥くんとかっ!!」

「ええ?」


 すっかり全身真っ赤に染まったまふゆが、意趣返しとばかりに朱音に向かって叫んだ。

 なんだ、朱音はあの鵺が好きなのか?


「ふふ。……やだなぁ、まふゆちゃん」


 しかし先ほどのまふゆの反応が乙女ちっくなものであったのに対して、こちらはまるでブリザードでも吹きそうな冷めた表情だった。
 これじゃどっちが雪女だか、分からなくなるな。


「夜鳥さんはなんていうか、(しつけ)のなってない飼い犬って感じ? 恋愛対象とかありえないよ」

「へ……」

「…………」


 一瞬にして場がしんと静まる。

 まるで天使のようなふわふわした見た目と表情で、言うことがえげつない。
 こいつはこいつでかなり癖が強いらしい。

 なんかほんと、こいつらって……。


「ぷはっ!!」


 あたしはもう堪えきれず、吹き出した。


「あははははっ!! あーもー! 墓穴は掘るわ、辛辣だわ、アンタら揃いも揃って面白過ぎだろ!!」

「「…………」」


 いきなりゲラゲラと腹を抱えて笑い出したあたしをポカンと見つめる二人。
 しかし少しして、二人もまたおかしそうに笑い出した。


「あはは! そういうカイリちゃんだって、なかなかだからね!」

「そうだよ! 人魚なのにカナヅチって、相当ギャグだよ!」

「おまっ、カナヅチのことは言うなよ!!」


 あーもーなんだこれ。ただここに居るだけで楽しいって、初めての経験だ。

 こういうのって、なんて言うんだろう……?