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「場所は繁華街、か……」
結局あの後風花さんに押し切られる形であたしはバイトが午後から休みとなり、今はくだんのパンケーキ屋を目指して歩いている。
無料券の裏面に書かれた地図によると、場所はティダのシンボルである赤い城のすぐ近く。どうやら観光客向けの店のようだ。
「あ、あれか」
目的の店は迷うことなく、すぐに見つかった。
〝パンケーキ♡ハピネス〟といかにも女子が好きそうな、ふんわりポップな書体で書かれた看板。店構えも明らかに女子受けを狙った、カラフルでファンシーなものになっている。
普段なら絶対にこの手の乙女ちっくな店には入らないが、風花さんの言う〝若者の味〟に全く興味がない訳ではない。
「……ふぅ」
深呼吸し、いざっ!
そんな気持ちで、店内へと扉を開こうとした時だった――。
「あれぇ? カイリちゃん!?」
「!!」
聞き覚えのある声に背後から名を呼ばれ、あたしの手は止まる。
「…………」
瞬間無視するかどうか悩んだが、その決断をする前に、パタパタと二つの軽やかな足音があたしに近づく。
「やっぱりカイリちゃんだぁ!」
「もしかしてカイリちゃんも、パンケーキ食べに来たの?」
「……〝も〟?」
声を掛けられては仕方ない。覚悟を決めて振り返れば、やはり立っていたのは、雪守まふゆと不知火朱音であった。
彼女達の手元を見れば、二人もまたあたしと同じ無料券が握られている。
「ああ、アンタらも無料でパンケーキを食べに来た口?」
「うん、そうだよ。今朝お母さんが午後のおやつに食べて来なさいって、くれたの」
「風花さんの知り合いの人が始めたお店らしいけど、無料なんて、すっごいよねっ!」
「え……」
それはあたしが風花さんに昼聞かされたのと、全く同じ説明。つまりこの二人もまた、風花さんにこの店へと誘い出されたのか。
何やら風花さんの作意めいたものを感じる。
「ちょうど今カイリちゃんも誘おうかって、話してたんだよ」
「でもバイト中に悪いかなって思ってたから、カイリちゃんも食べに来てたのなら、よかったぁ」
「一緒に食べようよ」
「…………」
にこにこと笑って話す二人。
