雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



「――――さま」

「…………」

「お父さまっ!!」

「!!」


 息子の声にハッと飛び起きれば、こちらを心配そうに見つめる息子の金色の瞳で視界がいっぱいになった。
 妻譲りのその美しい瞳には、赤い夕陽がキレイに映っている。


 ……ん? 夕陽?


「!?」


 慌てて空を見上げれば、あれ程ギラついていた太陽が沈みかけている。
 どうやらあのまま意識を失ってしまったらしい。この時間では、城の見学もとっくに終わっている頃だろう。


「あちゃー、ごめんな。せっかくお城の中に入れたのに……」

「いいよ、また一緒に来ればいいんだから」


 無邪気にそう笑う息子を見て、じくりと胸に痛みが走る。

 きっと〝また〟など永遠に来ない。

 今日でさえ監視の目を掻い潜り、やっとの思いでティダに来たのだ。
 僕の残された時間を考えれば、二度目はないだろう。


 分かっている。


「そうだな。また来よう」

「今度はお母さまも一緒にね!」

「ああ、母様も一緒に」


 分かっていて、嘘をついた。


 ◇


「わー! この砂、星の形してるー!」

「ははは、スゴいよな。まんま〝星の砂〟って呼ぶみたいだぞ」


 体調が戻った僕は、息子と手を繋いで散歩がてら海岸へと立ち寄った。エメラルドグリーンの海が赤く染まって、とても幻想的な光景である。
 砂浜にしゃがみこんで夢中で星の砂を拾う息子に、持参した小瓶へ入れるよう促した。


「これもお母さまのお土産?」

「うん。母様は屋敷から出られないからね」


 今日の旅行も出来るなら家族三人で来たかった。けれど妻の立場上それは難しい。ならばせめて気分だけでも味わってほしかった。

 本当は誰よりも外へ出たかったのは、他ならぬ妻なのだから……。


「お母さま喜ぶね!」

「んー……、そうだなあ……」


 残念ながら僕から渡したところで、中も見ずに突き返されるのがオチだ。
 かといって息子に渡させたところで、僕の入れ知恵だとすぐに気がつくだろう。
 
 それにこの土産は、今すぐ渡しては(・・・・・・・)意味がない(・・・・・)

 屋敷に置いておくのも不安だし、さてどうしたものか――。