◇
「お父さま、色塗り出来た!」
「おー、すごいな! よく塗れてる! 父様ビックリしたぞ!」
「えへへ」
お世辞じゃなく本当に出来がいい獅子人形を手に取って、僕はまじまじと見つめる。
どうやら横にある見本そっくりに塗ったようだ。
息子はかなり器用らしい。まだ4歳だというのに、末恐ろしいな……。
「お父さまのはボロボロー」
「あはは……、父様はちょっと不器用だから……」
妻への土産をと思ってホタル石でネックレスを作ってみたのだが、息子にはダメ出しをされてしまった。
確かに息子の言う通り、根付けが甘くボロボロである。
「母様こんなんじゃ喜ばないかなぁ?」
「お母さまにあげるの?」
息子の質問に素直に頷く。
すると息子は顔をパッと輝かせた。
「だったらお母さま、大喜びするよ。だってお母さま、お父さまのこと大好きだもん!」
「あはは……」
嬉しいことを言ってくれるが、現実は少々違うことは分かっているので、息子の言葉に苦笑する。
「うん、ありがとうな。じゃあ勇気を出して、母様にプレゼントしようかな」
そう言って、僕は少々歪なホタル石のネックレスを指で撫でた。
◇
「お城だー、お城があるー!」
「こらこら、引っ張るな」
興奮気味にはしゃぐ息子に苦笑しながら、ティダに来たら是非見たかった観光名所へと向かう。
「わぁ、赤色の屋根! おっきーい!」
目を引く赤い南国建築の城に大喜びの息子。
その手前、顔には出さないが、内心僕も初めて見る実物を前に興奮していた。
〝冒険好きの殿下〟として名を馳せていた國光が、ティダで一番オススメと言っていただけはある。重厚な中にも斬新さも感じる佇まいだ。
しかし國光と言えば、あのジッとしてられない性格で政務は捗っているだろうか?
……まぁ彼には優秀な宰相がついているから、これは余計な心配か。
どちらかというと気にかかるのは、彼女とのことだ。
引き離す原因を作った僕が願うのもおこがましいが、二人には絶対に幸せになって貰いたいのだから。
「よし! 中も見学出来るみたいだし、行くか?」
「うん!」
目をキラキラとさせて頷いた息子の手を引いて、意気揚々と足を踏み出す。……が、
――異変が起きたのはその時だった。
