雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



 意外な言葉に目を見開く。
 確かに体育祭に応援に来る父兄は多いが、我が家は遠方ということもあり、去年はお母さんは来ていない。
 なのに今年は来るなんて、一体どういう風の吹き回しなんだろう?

 そんな疑問が顔に出ていたのか、お母さんが苦笑した。


「これでも親だしね。アンタがどんな風に学校生活を過ごしているのか気になるのよ」

「んー、そっか……」


 そう言われてしまえば、それ以上何も言えない。釈然とはしないが、私は頷くに留めた。


「……さて。名残惜しいけど、これ以上引き止めたら帝都に着くのが遅くなっちゃうわね。みんな、これからもまふゆのことをよろしくね。今度は体育祭で会えるのを楽しみにしてるわ!」

「はい! 一か月間本当にお世話になりました」

「体育祭で会えるの楽しみにしてます!」


 それぞれお母さんに挨拶して、方舟に乗り込んでいく。


「まふゆ」

「うん」


 最後に私が乗り込む番が来て、方舟に足をかける。


 ――その時だった。


「ちょっと待ったーーっ!!」

「!?」


 唐突に引き留める声が鋭く響き、私は動きを止める。
 見ればこちらに向かって人影が二つ、ドタバタと走って来るところであった。


「なんだぁ?」

「まふゆちゃん、あれって……!」

「え、カイリちゃん!?」

「それに魚住さんもいる!」


 人影の正体がカイリちゃんと魚住さんなんだと気づいて、みんなが方舟から降りて来る。
 あんなに慌てて、もしかして見送りに来てくれたのだろうか?


「はぁ、はぁ……。よかった、間に合った……」

「どうしたのカイリちゃん? 昨日、見送りには来ないって言ってたのに」

「そのつもりだったけど、事情が変わったんだよ……」

「?」


 事情とはなんだろう?
 不思議に思って首を傾げると、カイリちゃんが横で荒げた息を整えている魚住さんを呼んだ。


「ほら、父さん。銀髪に(・・・)用があるんだろ?」

「え? 魚住さんが、俺に?」


 カイリちゃんの言葉に九条くんだけでなく、私達も目を瞬かせる。


「ああ、そうだべ。はー……、なんとか思い出せてよかったべぇ……」


 そう言いながら息を整えた魚住さんが、懐から何かをゴソゴソと取り出して、九条くんへと差し出した。