なんだかんだと目白押しだったティダへの帰郷も、いよいよ今日が最終日だ。
帝都までは方舟を使っても数時間は移動に費やす為、午前中にはティダを出ることになる。
「はー。夏休み中ずっといたのに、なんかあっという間な気がすんな」
「だね。ティダに来たのは初めてだったけど、快適過ぎてこのまま住みたいくらいだよ」
荷物をまとめて玄関先に出たみんなが、名残惜しそうに我が家を見上げる。
最初は〝壁が薄い〟だの〝ウサギ小屋〟だの、散々な言われようだったが、みんなすっかりティダでの暮らしに馴染んだようだ。
そんな様子を見て、お母さんが豪快に笑う。
「あはは! そんなに気に入ったなら、また冬休みにもおいで。アンタ達ならいつでも歓迎するわ! ……と、ちょうど来たみたいね」
「え」
お母さんが上空を見たのにつられて、私も顔を上げる。
するとゴウゴウという音と共に、方舟が徐々にこちらへと近づいて来るのが見えた。
「おーいっ! 嬢ちゃん達ぃーー!」
「あ、天狗のおじさん!」
ひょこっと方舟から顔を出して手を振るのは、行きでもお世話になったあの赤鼻の天狗のおじさんだった。おじさんは慣れた様子で方舟を着陸させ、ストンっと地上に降り立つ。
そして荷物を抱える私と九条くんの姿を見て、キョトンと首を傾げた。
「あり? せっかくティダまで駆け落ちしたってぇのに、嬢ちゃん達まで帝都に帰んのかい?」
「えっとそれ、おじさんの勘違いというか……」
「ん??」
そうだった。すっかり忘れてたけど、このおじさんには妙な誤解をされたままだったんだ。
しかも駆け落ちって、なんか前と話の設定が変わっているような……?
「――まふゆ、後は君の荷物だけだよ」
「えっ! あ、ごめん!」
私がおじさんと話している間に、他のみんなは荷物を方舟に積み込み終えていたようだ。
私は慌てて手を差し出してきた九条くんに、持っていたカバンを渡す。
「ありがとう。……それにしてもすごいね、このお土産の量」
「まぁ、それぞれの家族や友人の分があるからね」
私の言葉に九条くんが頷いて、方舟の荷台を見る。
荷台にはティダ土産定番のちんすこうを始め、泡盛にマンゴーにと様々なものが積み込まれていて、ちょっとしたお店が開けそうな量だ。
「……んっ!?」
と、そこで目を疑うようなものが荷台に積み込まれているのを発見して、思わず私は絶叫した。