「それ、前の早食い大会の景品。アンタらには散々迷惑かけたし、使って貰いたくて」
「ダ、ダメだよ!! これはカイリちゃんが貰ったものなんだから、カイリちゃんが使わなきゃ!」
「いや、あたしは毎年見てるからアンタ達に……」
「でも!」
更に私が言い募ろうとするが、にゅっと目の前に出てきた手のひらによって言葉を制されてしまう。
「はいはい、二人とも一度深呼吸しな。そんで落ち着いてからこのチケットをよーく見てご覧」
「何? よーく?」
お母さんに言われて、チケットをじっと見つめて……。
「あ」
そして気づいた。
〝この一枚で8人入れます〟
チケットには確かにそう書かれている。
「8人」
私に九条くんに朱音ちゃんに……。
指折り数えれば、お母さんはにっこりと笑った。
「ね、分かったでしょ? ちょうどここに居るのも8人なんだし、みんなで花火を見ればいいじゃない」
「え。いや風花さん、あたしは……」
ブンブンと首を横に振って後ずさるカイリちゃんの手を、私はぎゅっと掴んだ。
「一緒に見ようよ、カイリちゃん! せっかく友達になったんだからさ!」
「友達……」
「ねっ!」
「……」
呟いて真っ赤になったカイリちゃんはややあってコクンと頷いた。
それに私達は笑って、早速食事もそこそこに特別席へと向かう。
「おおーーっ!!」
到着した特別席はさすが特別というだけあって、一般の観覧場所よりも前方に張り出すようにして座り心地の良さそうなふかふかのイスが階段状に並べてられていた。
「すごっ! これならバッチリ花火が見られるね! ありがとう魚住さん!」
「あ、ああ。蛟が喜んでくれてよかった」
「……そこは雨美か水輝って呼んでほしいけど」
にこにこと笑って声を掛ける雨美くんに、カイリちゃんがホッとしたように頷く。
するとその横でどっかりとイスに座った夜鳥くんがカラリと笑った。
「いやぁー、けど場所取りしなくて済んでマジ助かったわ。サンキューなギャル人魚!」
「ギャル人魚言うな!」
「んだよ、そっちだって蛟とか言ってたじゃねーか!」
「まぁまぁ……」
――ヒュー、ドーーンッ!!
「!!」
カイリちゃん達がわちゃわちゃと言い合っている間に、いよいよ花火大会の開始時刻になったらしい。
ドーンッ! という大きな音と共に、鮮やかな花火がいくつも夜空に打ち上がった。