雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



 ◇


 花火会場である海岸には、もう既に花火を待ちわびる人々でいっぱいだった。
 どうやら打ち上げまではまだ時間があるらしく、花火が始まるまでの間、私達は屋台巡りをすることにした。

 お面屋さんに、わたあめ屋さん。
 様々な屋台を巡り、その中でも特に朱音ちゃんが興味津々だった射的を、私は実演してみせることになったのだが……。


「うげっ! また外した!」


 コンッと小気味よい音と共に、銃から撃ち出されたコルクが景品を外して明後日の方向へと飛んで行く。
 それを銃を片手に眺めていた雨美くんが、やれやれと首を横に振って笑った。


「わぁー、雷護はノーコンだねぇー」

「んだと!? そう言う水輝だってさっき全部外してたじゃねーか、下手くそ!」

「なにをー!?」


 そのままギャアギャアとまたも小競り合い始める夜鳥くんと雨美くん。
 私はそのすぐ横で精神統一をし、目当ての獲物を定めて銃の引き金を真っ直ぐに引いた。
 

 ――コンッ!


「おおっ!! お見事ーーっ!! お嬢ちゃん特賞獲得ーーッ!!」


 コロンと景品が倒れた瞬間、射的屋の厳ついおじさんが、持っていた小さな鐘を鳴らして高らかにそう叫んだ。


「やった!」

「きゃああ!! まふゆちゃん、すごーいっ!!」


 ふぅと息をついて構えていたコルク銃を下ろすと、朱音ちゃんがバラ色に頬を染めてバンザイする。
 そのあまりの愛らしさにニヨニヨしていると、おじさんに何かの紙を渡された。


「特賞はマッサージ機だよ! 自宅へ方舟(はこぶね)で配達するから、住所をここに書いておくれ」

「あーはいはい」


 おじさんに示された書類にサラサラとペンを走らせながら、未だこちらに尊敬の眼差しを向けてくる朱音ちゃんにドヤ顔をする。
 朱音ちゃんの前でカッコいいとこを見せることが出来て大満足だ。マッサージ機はお母さんにあげようかな。

 そうワクワクと思案していると、不意に横から強い視線を感じた。


「……何?」


 見れば夜鳥くんと雨美くんが、こちらを微妙な表情をして見ていた。
 そういえばこの二人も一緒に射的をしていたのだったか。


「別に」

「なんでもない」

「?」


 しかし取り付く島もなく即答され、更に盛大に溜息をつかれた。
 なんだよ、感じ悪いな。


「まふゆ」

「あ、九条くん」


 二人の様子に私が怪訝な顔をしていると、後ろから肩をトントンと叩かれる。
 それに振り返れば、九条くんは私の肩を叩きながらも、視線はある一点に釘付けになっていた。