ある日の夕方。
「あ……あ……」
私は目の前の光景に感極まり、そしてそのまま昇天しかけていた。
――何故ならば。
「どうかな、まふゆちゃん。似合う?」
天使様が……、私の部屋に天使様がいる……!!
白地に赤い金魚柄の浴衣を着た朱音ちゃんが、私を見て可愛らしく小首を傾げる。
髪をアップにしているからか、その表情はどことなく大人びて見えた。
「〜〜〜〜っ!!」
そのいつもとはまた違う表情にずきゅんとハートを撃ち抜かれた私は、思いのままに叫ぶ。
「めっっちゃくちゃ可愛いよ、朱音ちゃんっ!!! さすがお母さん!! 朱音ちゃんにピッタリのナイスチョイス!!」
「ふふ。でしょう?」
朱音ちゃんの着付けを終え、自身も素早く浴衣に着替えたお母さんが、興奮冷めやらない私を見てニヤリと笑う。
「そんなに喜んでくれるなら、わたしも準備した甲斐があったわ」
「はいっ! ありがとうございます、風花さん! いきなり押し掛けて泊めてもらった上に、まふゆちゃんだけでなくわたし達にまで浴衣を用意してくださって……」
「まふゆの友達が遠路はるばる遊びに来てくれたんだもの、礼には及ばないわよ。それにわたしも久々に家の中が賑やかになって楽しかったしね」
申し訳なさそうな顔をした朱音ちゃんの憂いを吹き飛ばすように、お母さんがケラケラと豪快に笑う。
――コンコン。
と、そのタイミングで扉をノックする音が響き、それに私は「あ」と呟いた。
「あっちの着付けも終わったのかな?」
「だろうね。――いいよ、入っといで」
お母さんがそう扉に向かって言えば、ガチャリと扉が開く。
すると現れた人物達を見て、朱音ちゃんとお母さんが歓声を上げた。