雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



「なら海神様、貴方がこのような行動に出た本当の理由をお聞かせ願ってもよろしいですか?」


 飛沫を手で拭い、妖狐からいつもの人型に戻った九条くんが海神様に問いかける。
 すると「よかろう」という声が耳に届いた。


「カイリが夜毎(よごと)奏でる悲痛な歌声は、海底に住む(われ)の元にも届いていた。そして我は、どうにかその憂いを取り除いてやりたいと考えたのだ」

「カイリちゃんの歌声が……」


 確かにあの美しくも悲しい歌声は、未だに私の耳にも残っている。
 でもまさか海底にまであの歌が届いていたなんて……。


「じゃあ海神、やっぱりアンタはあたしの願いを叶える為にここに来た訳?」

「否。お主の母はもうこの世にいない。いない者を会わせることは我にも出来ぬ」

「……っ!」


 キッパリとした言葉に、カイリちゃんはぎゅっと唇を噛み締めた。
 そして今にも泣きそうな顔で叫ぶ。


「っ、だったらアンタは何しに来たってんだよ!! あたしは母さんに絶対会わなきゃいけないのに……!!」

「カイリちゃん……」

「カイリよ、何故命を()してまで母に会うことに(こだわ)る? 母の言葉の真意(・・)。気づいていないお主ではないであろう?」

「それ、は……」


 海神様の柔らかな声に、カイリちゃんが一瞬言葉を詰まらせる。
 しかしそれでも絞り出すようにして、彼女はまた叫んだ。


「けどっ、母さんはあたしのせいで死んだんだ!! あたしのこの変な力のせいで、あたしはみんなを不幸にしてしまう……っ!!」

「カイリ、それは違うだ」


 するとそこでずっと黙ってカイリちゃんと海神様のやり取りを聞いていた魚住さんが口を開く。
 そしてそのままカイリちゃんの肩に静かに手を乗せて、緩く首を横に振った。


「父さ……」

「カイリ、母さんの死は断じてお前のせいじゃないべ。元々母さんは陸に上がった時から、もう僅かな寿命しか残されていなかったんだべ」

「え……?」

「それは、一体どういう……?」