「――っ父さん! あの、あた……」
「カイリッ!!」
「……っ!」
カイリちゃんが言葉を発する前に、魚住さんがカイリちゃんを抱きしめた。
「よかった……。無事で本当によかったべ……」
「父さん……」
そう顔を伏せて呟く魚住さんの背に、カイリちゃんが手を伸ばす。
しかしその手が魚住さんの背に届く前に、恐ろしい稲光と共に鋭い声が響いた。
「――来たか、人魚の子よ。今こそお主に問おう」
「!?」
突如聞こえたのは、まだ若い青年のようであり、しかし壮年にも老人にも聞こえる不思議な声。その声の出所を探そうと辺りを見回すが、それらしい人影はない。
けれどひとつ思い当たることがある。
『まふゆ達が高波に流された後、海面から海神を名乗る存在が現れた』
恐らく……。
「ねぇもしかして、さっき九条くんが言っていた……」
「ああ」
私の言葉に九条くんが頷く。
「この声の主こそ、――〝海神〟だ」
「っ、」
やっぱり。
ゴウゴウと荒れ狂う海。まさか本当に台風と共に現れるなんて……!
姿は見えないものの、桁違いの妖力が一帯に渦巻いているのは痛いほどに伝わってくる。
でも……、
「…………?」
さっきの声、どこかで聞いたような……?
「それに〝人魚の子〟って……」
私達の視線が一斉にカイリちゃんへと注がれる。
それにカイリちゃんが憮然とした顔をして、姿の見えない海神様に言った。
「問うって何をだよ? 海神があたしに何を聞きたい訳? もしかしてあたしの願いを叶えに来たのか?」
カイリちゃんが矢継ぎ早に質問する。
しかし海神様はそれらには答えず、静かに言葉を紡いだ。
「人魚の子カイリよ、我と共に海へ来る気はあるか?」
