雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



「朱音のいる場所にマーキングしてある。まふゆ、魚住さんも手を握って!」

「分かった! カイリちゃんも早く!」

「え? あ、ああ……」


 九条くんの言葉はかなり端的で、焦っていることが伺える。
 私はすぐさま頷いて彼の手を握り、 勝手が分からずキョトンとしているカイリちゃんの手を引っ張った。


「――行くよ」


 そして九条くんがそう呟いた瞬間、体が揺れるような感覚と同時に周囲の光景が一変したのだ。


 ◇


「ああっ!! まふゆちゃんっ!!」

「わっ! 朱音ちゃん!?」

「まふゆちゃん、まふゆちゃん……! よかったぁ、無事で。本当に……」

「朱音ちゃん……。ごめんね、心配かけて」


 九条くん達と共にマーキング地点に降り立つと、朱音ちゃんが飛びつくようにして私に抱きついてきた。
 その顔が濡れているのはきっと、未だ激しく打ちつける雨のせいだけじゃないのだろう。
 ああ本当に。あの時は必死だったけど、向こう見ずな真似をしてしまった。


「雪守ちゃん! よかった無事で!」

「雪守! お前、マジでビビらせんなよ……」

「そうですよぉ!! 雪守さんが海に飛び込んだ瞬間、生きた心地がしませんでしたよ!!」

「みんな……。ごめんなさい、心配させちゃって」

 
 雨美くん、夜鳥くん、木綿先生。みんなが私に駆け寄り、口々に声を掛けてくれる。
 そのいつになく動揺した様子に、本当にとんでもないことをしたのだと、今更ながらに罪悪感が私の胸を(さいな)んだ。


「カイリちゃんも。よかったぁ、無事で」

「あ、ああ……」


 私に抱きついたまま、朱音ちゃんは顔をカイリちゃんに向けてにこりと笑い、それにカイリちゃんが戸惑いながらもぎこちなく頷いた。


 ――と、


「カイリ……」


 みんなの後ろに立っていた魚住さんが、呆然とカイリちゃんを見つめている。
 そしてその表情のまま、ゆっくりとカイリちゃんへと近づいた。