そう言って、カイリちゃんがそろそろと布団から顔を出す。その顔はやっぱり想像通り、涙で濡れていた。


「――ねぇ、カイリちゃん。人って誰でも間違うんだよ。だけど間違えたからって終わりじゃない。間違えた後、どうしていくかが大事なんだって、私自身も最近やっと気がついたの」

「どうしていくか……。でも、あたしはもう……」


 小さく呟いたカイリちゃんの水色の瞳から、ポロリとまた涙がこぼれる。
 それに私はゆっくりと布団に近づき、カイリちゃんと向き合った。


「カイリちゃん……。なんで私達がカイリちゃんを探しに来たのか分かる?」

「え……」

「カイリちゃんのお父さんが私の家まで訪ねて来たからだよ。この家だって、カイリちゃんが居ないことに気づいてよほど慌ててたんだろうね。布団はそのままだったし、玄関も開けっ放しになってた」

「…………っ」

「これでもカイリちゃんは、本当に〝もう終わり〟だって思うの……?」


 私の問いかけに、カイリちゃんが緩く首を横に振る。
 そしてポロポロと溢れる涙を拭いながら、カイリちゃんは私を真っ直ぐに見て言った。


「あたし、謝らなきゃ……! 父さんにも、あたしを探してくれたみんなにも、ちゃんと……!」

「うん!」


 その眼差しは本来のカイリちゃんらしい力強さを取り戻していて、私は笑って頷く。
 たくさん苦しんで尚、人を想う優しさをもつ彼女ならば、きっともう大丈夫。


 ああでも、これだけは……。


「ねぇ、カイリちゃん。こういう時は謝るんじゃなくて、もっとピッタリな言葉があるんだよ――」


 ◇


 ……間違えて、傷つけて。
 きっと人から見たら、まわり道だらけのでこぼこ道だろう。

 だけど平坦じゃないその道の先、ようやく私達の心は繋がった。