「――――――っ」


 頬に激しく打ちつける冷たい感触に、ハッと目を見開く。

 雨だ。酷い雨が降っている。

 先ほどまで何か夢を見ていたような気がするが、しかしいくら頭を捻っても何も思い出せない。


「……」


 ボーっとした頭のまま周囲に視線を巡らせれば、土砂降りの地面に誰かが倒れているのが見えた。

 ……あれ? その水色のショートヘア、どこかで見覚えが――って!!


「カイリちゃんっ!?」

 
 なんでカイリちゃんが倒れて!?
 あっ! そうだ私、カイリちゃんと大波に呑み込まれて……っ!!

 ぼやけた頭がようやく覚醒し、私は慌てて身を起こして、倒れたままのカイリちゃんに駆け寄る。
 すると気は失い人間の姿に戻っているものの、外傷は無いようでひとまずホッと息をついた。


「……ふぅ」


 とはいえ、ここはどこだろう? どうやら偶然どこかに流れ着いたようだが。
 このまま外にいては風邪ひいてしまうし、雨宿り出来る場所があればいいのだが……。

 キョロキョロと辺りを伺えば、視界の端に見覚えのあるものが映った。


「あれって……」


 見えたのは岩場に建つ、小さな石碑のようなお墓。

 それは忘れもしない肝試しの夜、カイリちゃんがお母さんのお墓だと言っていたもので間違いなかった。


「あのお墓があそこにあるってことは……」