こんな状況ではあるが、運が良い。
雨美くんが船着き場から目と鼻の先まで運んで来てくれたこともあって、この荒波の中にも関わらず、少し泳ぐだけでカイリちゃんの元に辿り着けた。
後はなんとか陸に上がらなければ……!
「雪守ちゃんっ!! すぐにそこまで行くから!!」
「!! 雨美くん!!」
声のした方を見れば、ちょうど雨美くんが海に飛び込むところだった。
「まふゆちゃん、カイリちゃん、頑張って!! もう少しで雨美さんが来るからね!!」
「うんっ!!」
朱音ちゃんの言葉も耳に届き、「よかった、もう安心だよ」とカイリちゃんに告げる。
しかしその時、いまだ上空を浮遊していた木綿先生から鋭い悲鳴が上がった。
「……っ、雨美くん!! 急いでください!! また大波が来ますっ!!」
「何ィィ!?」
「まふゆちゃん!!」
夜鳥くんや朱音ちゃんの慌てる声が聞こえる。
「雪守ちゃんッ!!」
「あ――――」
ほんの、ほんのすぐ近くに、蛟の姿となった雨美くんが荒ぶる波をかき分けて現れる。
けれど波の動きは早く、もう……間に合わない。
「っ、カイリちゃんっ!!!」
「……っ!」
上手くまとまらない頭の中で、せめてと私はカイリちゃんの体を強く抱きしめ、身を固くする。
そして――……。
――――ザプーーンッ!!!
激しい高波に呑まれ、海深くへと沈んでいく瞬間、視界が一気に黒く染まった。
「まふゆっ!!!」
遠ざかっていくみんなの声。九条くんの声。
それが耳に届いたのを最後に、私の意識は完全に途切れる……。
…………筈だった。
