「それではここで別れましょう!」
「海側はボクらに任せてよ!」
「木綿先生、雨美くん……。くれぐれも気をつけてね!!」
ゴウゴウと打ちつける雨風に足を取られながらも海岸に辿り着いた私達は、それぞれ蛟と一反木綿の姿になって海へと繰り出す雨美くんと木綿先生を見送る。
ちなみに蛟とは、竜のように胴体がニョロりと長い水棲妖怪である。水の妖力を自在に操り、泳ぎにおいて右に出る者はいない。
また一反木綿の飛行能力については、もう新たな説明はいらないだろう。海の捜索は全面的に二人に任せて大丈夫そうだ。
そして残った私達は念の為、海岸沿いや船着き場にカイリちゃんの姿が無いか隈なく探すことにしたのだが……。
「クソッ、冷てぇ! 雨で全然前が見えねぇぞ!!」
「ひゃああ!! 風が強くて、吹き飛ばされちゃいそうー!」
「みんな、足元には注意して! 間違っても海に落ちないようにね!!」
吹きつける凄まじい雨風を前に、捜索は遅々として進まない。
ここまで通って来た道のりでも、カイリちゃんらしき人影は見当たらなかった。
「やはり陸での捜索は困難だな。海に出た雨美と木綿先生が戻るのを待つしかないか……」
頬に打ちつける雨を拭いながら、九条くんが思案顔で呟く。
「ああっ!!」
「!? どうしました!?」
すると突然魚住さんが叫び声を上げ、私達は何事かと彼を一斉に見た。
「オラの釣り船がないべ!!」
「ええっ!?」
言って船着き場を指差す魚住さん。
ここは以前、飛んだスイカを追いかけてカイリちゃん親子に出会った場所だ。ちょうどこの場所に船が停泊していたのもハッキリと覚えている。
しかし確かに今はその船が忽然と消えていた。
「も、もしかして、この強風で流された……とか?」
「それは絶対に無いべ。昨日海神の御成に備えて、ロープでキツく固定してたんだ」
「じゃあどうして……?」
私が呟くように言うと、魚住さんが顔を手で覆って項垂れた。
「恐らくカイリだべ。カイリが釣り船で海に……」
「えっ……!?」
「マジかよ」
こんな大荒れの海の中、船を操縦するなんてあまりにも無茶だ!
とんでもない事実に最悪の事態が頭をよぎり、私達は顔色を悪くする。
「ちょっと待ってください、魚住さん」
が、そこで九条くんが不思議そうに首を捻って、魚住さんに尋ねた。