「カイリを……、カイリを見なかっただか!? 物音で目を覚ましたら、カイリがどこか外へと出て行っちまってたんだ!!」
「えっ……!?」
ずぶ濡れのまま我が家の玄関先で叫んだカイリちゃんのお父さんの言葉に、私達は全員驚きに目を見開く。
なにせ外は叩きつけるような激しい豪雨。その上、視界を遮るほどの猛烈な強風までも吹き荒れている。
とてもではないが、まともに出歩ける状況ではない。
「ほ、本当にカイリちゃんは外に出たんですか? 姿が見えなかっただけで、家のどこかに居るんじゃ……」
「狭ぇ家だし、隠れるようなスペースはねぇ。それにカイリの靴も無くなってて、家を出たとしか思えねぇんだ」
「そんな……」
それは確かに外へ出た可能性が高いのかも知れない。
けれど例えそうだとして、カイリちゃんはどこへ行ったのだろう?
この間ばったり出くわした時の様子を見るに、彼女がいたずらにこのお父さんを悲しませる行動を取るようには思えないのだが……。
「魚住さん、カイリが行きそうな場所に心当たりは?」
「それがお恥ずかしい話だべが、あの子が行きそうな場所の見当もつかなくてなぁ。唯一、風花さんのことが頭に浮かんでここを訪ねたんだべが……」
そう言ってカイリちゃんのお父さんがガックリと項垂れる。
念の為、周辺の家も全て訪ね回ったそうだが、やはりカイリちゃんの行方に繋がる手掛かりは得られなかったそうだ。
「こんな悪天候の中を徒歩で移動なら、そう遠くには行けないはずだけど……」
「うーん。だったら他に探していないところって、どこだろう? 海……はさすがにないか」
「海……? もしかすんと……」
私と九条くんの会話を聞いていたカイリちゃんのお父さんが、ハッとしたように顔を上げた。
「どうしました? 何か手掛かりが?」
「いんや、手掛かりって言うほどのことじゃねぇんだけども。そういや昨夜、カイリが妙なことをオラに聞いてきたべ」
「妙なこと……?」
「〝海神の姿を見たら、一つだけなんでも願いが叶うって本当か〟って」
「えっ……?」
その言葉に私の思考がピタリと止まる。
まさか、まさか……。