雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



 ◇


「あ」

「おはよう」


 居間に入ると、九条くんがイスに座って本を読んでいた。視線が本から私へと向いて、ドキリと心臓が跳ねる。
 まだこんなに早い時間だから、誰も居ないと油断していた……。


「おはよう。もしかして九条くんもこの音で目が覚めたの?」

「そんなとこ。言い伝えが本当なのならすごいね、海神様というのは。陸に近づくだけで、こんな台風になるんだから」

「あはは。本当のところは分からないけどね。実際に姿を見た人はいないんだし。あ、九条くんもレモネード飲む?」


 言いながら昨日作っておいたレモネードを台所から持って来て二人分コップに注ぎ、ひとつはイスに座っている九条くんに差し出す。


「ありがとう」


 コップを受け取った九条くんが、そのまま私を見上げて笑う。
 それにまた胸がドキドキするのを感じながら、私は九条くんの向かいのイスに座った。


「……九条くん。あの、一昨日はお母さんと二人にしてくれてありがとう」

「ちゃんと言いたいこと言えた?」

「うん。肝心なことははぐらかされちゃったけど。……でも、前進は出来たと思う」

「そっか、ならよかった」


 私の言葉に九条くんがどこかホッとしたような表情をして、レモネードを飲む。
 どんなことを話したのか、何も聞いてこないのは九条くんの気遣いだろう。今はそれに感謝して、きっと後で九条くんにも伝えようと心に決める。

 そうして私もレモネードを一口飲めば、爽やかな酸味に頭がシャキッと目覚めるのを感じた。


「レモネードってあまり飲んだことがなかったけど、美味しいね」

「よかった。これはシークワーサー入りの特製なの。おかわり要る?」

「うん」


 頷く九条くんのコップに手を伸ばした瞬間、


 ――ドカーーーーンッ!!!


「!!?」


 天を切り裂くような落雷の轟音(ごおおん)が家を激しく揺るがし、私達は顔を見合わせた。


「大丈夫かな。まさか家が壊れるなんてことは……」

「いやいや、それはさすがに……」


 ……無い。とは言い切れなかった。

 昨日の夜鳥くんと雨美くんの言葉があながち間違いじゃなかったことに、内心冷や汗が流れる。