お母さんの話を聞く内に、カイリちゃんのことが頭に浮かんでくる。
『母さんが人魚で父さんは人間。元々母さんはザンの森に流れ着いた人魚で、たまたまその近くで魚を獲ってた父さんが母さんを見つけたのが始まりらしい』
そういえばお母さんは、カイリちゃんが人魚の半妖だと知ってるのだろうか?
というかそもそもどういう経緯で、アルバイトとして雇うことになったのだろう?
「ねぇ、おか……」
「風花さーん! 屋根の補強終わりましたぁーーっ!!」
問いかけようとした声は、しかし屋根から響いた騒がしい声によって掻き消されてしまった。
声の主は言わずもがな、一反木綿姿の木綿先生である。
「あら先生、お疲れ様。じゃあ他にも頼みたいことがあるんだけど、いいかしら?」
「アイアイサー! お安い御用です、風花さん!」
軽快に返事をした木綿先生が、いつになくキビキビとお母さんの指示に従って動き出す。
なんというか、その姿は……。
「姐さんと舎弟って感じじゃね」
夜鳥くんの呟きに、みんなが一斉に頷いた。
◇
そうして慌ただしくも、なんとか〝海神の御成〟を迎える準備を終えたその日の深夜。
異変は突然起きた。
――ドカーーーーンッ!!!
「!!?」
まるで一昨日の台所爆発事件を彷彿とさせる酷い爆発音に、私は布団から跳ね起きて、慌てて周囲を見渡す。
「すーすー」
するとすぐ隣の布団で穏やかな寝息を立てている朱音ちゃんが視界に入り、ここが自室であることを寝ぼけた頭で認識する。
「…………夢?」
薄暗くてハッキリとは分からないが、見たところ寝る前と部屋の様子は変わっていない。家具が壊れたり、あまつさえ爆発したりしている様子も無い。
――やっぱり夢か。
そう納得していると、外から激しく家を揺さぶられるような感覚がして、そっと窓を覗く。
すると前が見えないほどの滝のような雨が、窓をバチバチと打ちつけていた。
どうやら〝海神の御成〟が始まったらしい。
恐らくさっきの爆発音も、この激しい雨音を勘違いしたのだろう。
時計を確認すれば、針は4時を指している。
正直まだ眠り足りないが、この雨音の中でまた寝入るのは難しい。
「…………」
私は眠っている朱音ちゃんを起こさないようにして、そっと部屋を出た。
