トンテンカンカン、トンテンカン。

 我が家の台所が爆発によって大破した翌朝。
 トンカチを振るう小気味よい音が、家の周囲まで響き渡る。


「うあー、腰痛ぇー! おい、こっちの補強は終わったぞ雪守っ!」


 そのトンカチを振るっていた人物――夜鳥くんが、腰をぐっと伸ばしながら渋面でこちらを見た。
 トレードマークの黄色いツンツン髪が白いタオルでぎゅっと巻かれ、その姿はさながらガテン系である。


「ありがとう夜鳥くん! これで明日からの台風もなんと(しの)げそうだよ!」

「けどいきなり天気が変わって台風だなんて、ツイてないよね。本当なら明日の夜は花火大会だったのに、遅延しちゃうし」


 そう言ってこちらに歩いて来たのは、夜鳥くんとは反対側の補強作業をしていた雨美くんだ。
 不満そうなその表情を見やり、私は肩をすくめた。


「まぁ残念ではあるけど、ティダじゃ突然台風が発生することはよくあるから仕方ないね。それより二人とも、明日は絶対に外に出ちゃダメだよ! ティダの台風は帝都と違って、建物だって吹き飛ばすんだから!」

「うへー。んじゃあこんなちっちぇ家なんて、あっという間に吹き飛ぶじゃねーか!」

「違いないよ! 雪守ちゃんっ! もうこのボロ家は捨てて、どこかホテルに避難を……」

「は?」


 聞き捨てならない言葉にギロリと睨めば、途端に二人は青ざめて口を(つぐ)む。

 全く、失礼な。
 今回こそ本当に野宿でもさせてやろうか。

 そんな不穏な考えが私の頭をよぎった時、カラカラと明るい笑い声が辺りに響いた。


「まぁまぁ、そう文句言いなさんな。ティダでは台風のことを〝海神(うみがみ)御成(おなり)〟って言って、そう悪いことばかりでもないんだから」

「あ、お母さん」