「覚えてる? 今でこそなんとかわたし一人でやれてるけど、家事も仕事も、それこそ昔は何から何までまふゆに頼りっ放しだったじゃない?」
「そうだっけ?」
お母さんの言葉に、小さい頃の記憶が走馬灯のように私の頭を駆け巡った。
「掃除をすれば何故か逆にゴミだらけ。料理をすれば失敗ばかり。仕事だって何をやっても長続きしなくて、結局まふゆに言われてかき氷屋を始めたんだよね」
「ああ、そういえばそうだったっけ」
思い出して苦笑する。
確かに昔のお母さんは、ズボラ以前に家事も労働も本当に何もしたことが無かったらしく、庶民の癖にどこのお姫様かと思うほど、なんにも出来ない人だった。
「そんな不甲斐ない母親、いつ愛想を尽かされたって文句言えないのに、アンタはいつだって一生懸命わたしを助けてくれた。本当に感謝してる」
「お母さん……」
私にとって、お母さんの家事や仕事を手伝うのは当然のことだった。
我慢してるなんて思ったことはないし、ケンカはしても、愛想が尽きるなんてこと、絶対にあり得ないのに……。
「半妖であることを隠すように言った時も、アンタはしっかり言いつけを守ってくれた。それに安堵した半面、わたしの言いつけを守ろうとするあまり、友達も作らず他人と距離を取るアンタを見て、ずっと申し訳ないとも思ってた」
「…………っ!」
思わず驚いて、ウロウロと彷徨っていた視線をお母さんの顔に向けると、私と同じ赤い瞳とかち合った。
「言ったこと自体を後悔したことは無いわ。雪女の半妖であることを隠すのは、アンタを守る為に必要なことだったから」
「それは何から守る為なのって、聞いてもいいの?」
ハッキリと言い切ったお母さんは、いつもの飄々とした姿とは別人のように真剣な顔をしていて。
それに私は何故かぎゅっと心臓が掴まれたような苦しさを感じながら、なんとか言葉を紡ぐ。
「お母さん……。私、お母さんの言う通り、ずっと誰かと関わることを無意識に避けてた。〝隠し事をしている自分が誰かと親しくなってはいけない〟って、心のどこかで思ってた」
「まふゆ……」
「でもね。九条くん達、生徒会のみんなと一緒にいる内に気づいたの。半妖であることを言えなくても分かり合うことは出来るし、友達にもなれるって」
生徒会のみんなに、朱音ちゃん。
それにクラスメイトや文化祭実行委員。日ノ本高校で出会った、たくさんの人達。
それぞれ関係性は違うけれど、彼らとの〝縁〟は私にとって初めて〝向き合ってきた〟と言えるものだった。
